整形外科開業医から見た「地域医療連携」について
整形外科医の本音シリーズ、今回のテーマは「地域医療連携、高齢化社会の危機」についてお話したいと思います。
整形外科の開業医から見た地域医療連携について少し考えてみました。
外来をしている中で、本当に毎日のように考えさせられることなんですね。
地域医療連携とは?
まずは、「地域医療連携」という言葉について説明しましょう。
1人の患者様が病気になったとします。
病気を治療する、外来に通う、入院をして治療を受ける、時には手術をするかもしれません。
そして、退院して病院を出て自宅に戻る。
その後、自宅で様々な医療や看護を行う。
この一連の治療、もしくは治療の後の状態を滞りなく、1つの連携を取りながら包括的に1人の患者様にご提供する、これが地域医療連携です。
これがどこかで留まってしまうとか途切れてしまうと、その患者様が不利益になってしまいます。
適切な治療や介護を受けれないことで、状態が悪くなったり時には死に至る、本当に重篤な問題です。
「手術をすればいい」だけではない問題
具体的な例を挙げてお話していきたいと思います。
85歳の女性で長く私が外来で診てきた患者様です。
この方は元々内科のご病気があり、高血圧、 糖尿病、そして喘息発作を持っている方だったんですね。
内科の先生から投薬、お薬をもらって治療をしていました。
喘息があると、なかなか体に合わないお薬があって使えないという困難なこともあります。
この方は骨粗鬆症もあり当院で検査や治療を定期的に行ってきたんですが、ある時転んでしまって大腿骨頚部骨折という股関節のところが折れてしまう大きな骨折を起こしてしまいました。
整形外科医的には、早く入院して手術をして元の歩ける状態になった方がいいと考えます。
しかし、内科の先生は手術の時の薬剤、手術の前後で使う抗生物質や注射も含めてアレルギー反応が出ないか、喘息発作が出ないか心配だと言います。
また、ご家族がいる場合にはおばあちゃんを入院させて、そんな大きな手術をして大丈夫か心配になりますね。
実は、この女性の方はご家族がいなくて1人暮らしだったんです。
そうすると、自分が入院してしまって1ヶ月ぐらい家を開けることになると飼ってる犬はどうすればいいのか、様々な心配が出てきます。
近所の方がその役割を担ってくれるのか、サポートしてくれるのか、帰ってきた後にどのように介護保険を使っていいのか、取り止めもなく多くの問題点が上がってくるわけです。
整形外科的に入院して手術をする方がいい、それだけではそんなに簡単には済まされない問題があるわけです。
「介護」をする上での弊害
今度は75歳の男性の方が、90歳超えてもう100歳近いお父様の面倒を見られているという介護しているケースです。
75歳にもなると普通は自分のことだけでも精一杯ですよね。
自分の体もなかなか最近は思うように動かなくなってきた。
痛いところも色々ある。
でも、98歳だったと思いますがそのお父様の介護をしなきゃいけないから自分が痛いなんて言ってられない、自分が具合悪いなんて言って病院に行ってられないという責任感を感じていました。
単に気持ちの問題のみならず、本当に体が辛く持病の内科的な血圧や肝臓の問題などが時には悪くなってしまって、様々な弊害が出てくるわけです。
その高齢のお父様と息子様を見ていると、外来でも本当にいたたまれない気持ちになって、自分の親だったらどうやって対処するだろうと考えます。
考え始めると外来が手につかなくなってしまうぐらい、やり場のない辛さを感じました。
私ごとき一整形外科医が何か解決できるということではなく、家族、介護、そして地域の住民を含め、さらには福祉や行政というところまでもが一体となって、1人の患者様を守る体制を作っていくことがとても重要になってき ます。
形や言葉だけではない、本当の1人の患者様を守る体制を作るために1人1人が何ができるか、地域の住民が何ができるか、今一度考えなければならない超高齢化社会がやってきていると思います。
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