コラム詳細

整形外科では患者様を取り巻く環境・背景を見なければ治療はできない

16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

山田朱織って誰?

プロフィールをご紹介

山田朱織が診察をしている様子

普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。

今回のタイトルは「高齢者の生活がどんどん変わっている」ということについて、整形外科医から見た観点からお話したいと思います。

目次

患者様が年齢を重ねていくと同時に取り巻く環境の変化もある

私が神奈川県相模原市で16号整形外科という自分のクリニックを開設してから約16年が経ちました。

その当時からずっと長く通ってくださってる患者様がたくさんいらっしゃいます。

当時50歳の患者様は66歳、60歳だった患者様は76歳、70歳だった患者様は86歳とどんどん高齢化しているわけですね。

中には90歳を超えて100歳近い方、100歳を超えた方も患者様にはいらっしゃるようになりました。

もちろん私も患者様と一緒に年齢を取っていくわけですけれども、そのような高齢者、超高齢者の患者様を見ていると最近つくづく感じることがあります。

それは整形外科の病気ですから、変形性頚椎症、変形性腰椎症、脊柱管狭窄症、変形性膝関節症、たくさんの加齢変化と共に起こる病気を診ているんですが、そんな体の症状だけではなく患者様を取り巻く環境そのものがどんどん変わっていっているということです。

患者様の周りの環境の変化がある

月日が経つにつれて生活の背景が変わっていきます。

仕事をしていた方が退職されたり、家族構成の変化がある。

ご主人が亡くなったり奥様が亡くなったり、時には娘様や息子様がなくなったり、家族構生が変わっていきます。

それからどうしても1人では生活できないために、自宅に住んでいたのに退居して施設に入所されるなど様々な生活の変化があるわけです。

そのような変化があることで、整形外科の病気に関わってくることも多分にあるということです。

私の心に非常に強く刻まれたいくつかの患者様のお話をしたいと思います。

ケース1:いつ歩けなくなってしまうか心配

息子様と2人で暮らしている方がいました。

息子さんの帰りがとても遅いため、朝起きた時から夜寝るまでその方はほとんど1人で生活をされているのと同じような状況でした。

台所に立つのはやっとなので、息子さんが朝用意してくださった朝食を食べ、昼食を食べ、簡単に食事を済ませていつ帰るかなあと息子さんの帰りを待っています。

本当にそれを1日中考えて待っている、とその患者様は診察の時にお話をされます。

どんなに待っている時間が長いだろうな辛いだろうなと思うわけです。

もし座骨神経痛がひどかったらとっても不安になると思うんですね。

歩けなくてトイレに行けなかったらどうしよう、食事ご飯を食べるために台所に行くこともできなかったらどうしよう

息子さんが帰るまで何もできない、そんなことも決して珍しい話ではないんです。

ケース2:自分で歩けるうちに膝の手術を受けた患者様

この方は両方の膝が悪くて、人口関節という膝の中に大きな機械を入れるような手術をしなければ歩けなくなるかもしれないという状況でした。

自分は家に犬を飼っていて1人暮らしだから家を開けられない。

家を開けている間、家が不用心で心配だから絶対に家を開けられないから手術はできないとずっとおっしゃってました。

でも、ある日診察に来た時にその患者様は言いました。

「私、決めたんです。手術をします。」

「なぜですか?」と、聞くと、

「このままどんどん歩けなくなって、自分のことが自分でできなくなったら私はどうやって生活すればかわからない。それが心配だから自分で歩いていけるうちに、この膝をなんとか治さなきゃいけない。だから先生が言うように人工関節の手術受けてみます。」

と、おっしゃったんです。

ある日、大学病院に1人で大きな荷物を持って入院して、ちゃんと両膝の手術を受けて帰宅されました。

退院する時も全部自分で荷物を持って、タクシーを呼んで自宅まで帰ってきました。

その後、診察に来てくださった時にその方の表情はとても明るくやっぱり手術して良かったとおっしゃいました。

手術という大業を終えるにあたってとても心細かったと思うんですね。

そして手術をして終わった後、まだまだ膝の調子が全快ではない時期に大きな荷物を持って退院してくるのは、私の年齢でも辛いと思うのにそれを90歳近い女性が1人でやったわけですからすごいことです。

私はなんとか病院に車で送って行って、帰りも迎えに行ってあげたいと本当に心から思いました。

家族が近くにいないという心細さ、大きな手術をするという恐怖感、それを全部80代の女性のお力を尽くした結果を見せていただき勇気をいただきました。

患者様を取り巻く背景も見なければ治療はできない

話せばきりがないんですが、そんなお話は毎日の外来でたくさんお聞きます。

おそらく多くの医者や看護師さんたちが、高齢者を診るという今の医療に直面していて、社会も進んでおりますのでどうしていいのかノウハウもないまま、みんな思考錯誤しているんだと思います。

命を助ける、痛みを取るという医療の大前提が、患部だけ診ていても悪いところだけ治してももう立ち行かないぐらい、全ての患者様の背景も見なければ治療ができないぐらい急速に襲ってくるこの高齢化社会の医療。

私たちはもう1度、自分たちが何をすべきか考え直さなければいけない岐路に立っていると思います。

だからと言って私が何かできるということもないんですけれども、一生懸命その患者様の声を聞いて可能な限り答えていって少しでもお役に立てればと思う毎日です。

本コラムの内容は動画でもお話ししています▼


YouTubeのチャンネル登録で最新情報をお届けします!



  • 「5mmを調整する枕」

    靴は5mm単位で自分のサイズを決めているのに。
    365夜、あなたの首を支えているのは枕だけ。
    医学的研究と臨床経験の中で生まれた当社の計測方法は、
    あなたにジャストフィットする、5mmを調整します。

    オーダーメイド整形外科枕