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痛みと不眠の悪循環を断ち切る方法|3種類の痛み別の薬の選び方とCBT-I【整形外科医監修】

痛みと不眠の悪循環を断ち切る|最新研究でわかった対処法と不眠の認知行動療法(CBT-I)

16号整形外科 院長・山田朱織枕研究所 代表 山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。 日本整形外科学会専門医 / 医学博士 / 日本腰痛学会会員
オーダーメイド枕・整形外科枕

整形外科の現場でよく耳にするのが「痛くて眠れないんです」という訴えです。多くの方が痛みを睡眠障害の原因だと考えていますが、実は眠りが悪いことが痛みをより強く・より長く感じさせてしまうという、逆方向の関係も分かってきました。この記事では、痛みと不眠の悪循環が起こる仕組みから、2026年に発表された最新研究、薬に頼らず眠る力を取り戻す「不眠症の認知行動療法(CBT-I)」、そして枕を見直すことで改善した実例まで、整形外科医の視点でわかりやすく解説します。

痛みと不眠、先に始まるのはどちら?【2026年 最新知見】

「痛くて眠れない」というのは、多くの方が経験するポピュラーな悩みです。しかし最近、眠れないから痛みが気になるという逆方向の関係についても、新しい研究知見が出てきました。

参考にしたのは、山田恵子先生のグループが2026年に「睡眠医療ネクサス」誌に発表した「睡眠障害と慢性疼痛の双方向関係」という論文です。日本人約2万3000人を対象とした大規模な調査で、痛みと睡眠の関係を一定期間追跡したものです。

痛み → 不眠 影響が続く期間は比較的短期(3ヶ月〜3年程度)。強い痛みが睡眠を妨げるのは事実ですが、痛みが落ち着けば睡眠も回復しやすい傾向にあります。
不眠 → 痛み 睡眠が悪いことで痛みを引き起こす・強めてしまうリスクは3年以上と長期に及ぶ可能性があると分かってきました。

つまり、痛みが睡眠に与える影響よりも、睡眠の質の悪さが痛みに与える影響のほうが、長く尾を引きやすいということです。「痛いから眠れない」だけでなく、「眠りが悪いから痛みが続く・強くなる」という視点を持つことが、今回の研究のポイントです。

「寝ているのに満足できない」人ほど痛みを感じやすい

この調査では、睡眠時間が6時間以上とれている方の中でも、睡眠の「充足感」がない方ほど痛みを感じている割合が高いという結果が出ています。時間だけでなく、質・満足感が重要だということです。

症状 睡眠に充足感がない人のリスク
腰痛充足感がある人の 約4.58倍
頭痛充足感がある人の 約4.01倍
肩こり充足感がある人の 約3.85倍
関節の痛み充足感がある人の 約2.98倍

睡眠時間を確保していても、「よく眠れた」という実感が持てない方は、痛みが続き大きくなりやすいという結果です。次の章では、なぜこのような悪循環が生まれてしまうのか、そのメカニズムを見ていきます。

痛みと睡眠障害の悪循環はなぜ起こるのか

痛みが長く続くと、脳の中の痛みセンサーが敏感になります。そうなると単に「痛い」だけでなく、「また今晩も痛いんじゃないか」「仕事をしていると痛いんじゃないか」と精神的にもつらくなってきます。すると今度は、脳が本来持っている痛みを抑える働き(ブレーキ)が弱まってしまうのです。

ブレーキが踏めない車が走り続けてしまうのと同じで、痛みを感じやすくなる変化と、痛みを抑えられなくなる変化が脳の中で同時に起こり、悪循環に陥ってしまいます。

悪循環の火付け役は「不安」と「考えすぎ」

この悪循環のスタート地点は、多くの場合「不安」や「考えすぎ」です。不安・考えすぎ → 心と脳が興奮 → 眠れない/眠りが浅くなる → 体のストレス反応が強まる(炎症・ストレスホルモンの増加)→ 痛みを抑える力が弱まり痛みが強くなる → さらに不安になり眠れなくなる——というループが繰り返されてしまいます。

悪循環を断ち切る手段のひとつが薬です。痛み止めで痛みを抑えるか、睡眠薬などで睡眠を回復させるか——どちらのアプローチをとるかは、痛みの種類によって変わります。

痛みの種類と適切な薬の選び方

痛みには原因によって大きく3つの種類があり、種類が違えば効く薬も全く異なります。自分の痛みがどのタイプかを知ることが、正しい治療の第一歩です。

痛みの種類 どんな痛み? 適切な治療(薬)
侵害受容性 けが・炎症・物理的損傷による痛み いわゆる痛み止め(炎症鎮痛剤)
神経障害性 痛覚が過敏に/神経損傷による痛み プレガバリン等の神経障害性疼痛薬
心因性 メンタルによる痛み(身体に異常なし) 精神科的治療・薬物療法(痛み止めは無効)

1. 侵害受容性疼痛

けがや炎症、物理的な組織損傷によって起こる痛みです。ガラスで切れた、打撲した、関節が炎症を起こしているといった状態です。

この場合は薬局でも購入できる炎症鎮痛剤(いわゆる痛み止め)が有効です。市販薬で対応できることも多く、症状が強ければ医師に処方してもらいましょう。

2. 神経障害性疼痛

長期間の痛みが続いた結果、痛覚が過敏になることで起こる痛みです。神経そのものが損傷されている場合もあります。

この状態になると、「痛みを受けていない時でも痛みを感じる」という過敏反応が起き、気持ちもつらくなります。

通常の痛み止めではなく、プレガバリンのような神経障害性疼痛専用の薬が使われます。

3. 心因性疼痛

身体には特に異常がないのに、メンタルへのダメージが首や頭の痛みとして現れる状態です。

心因性疼痛には通常の痛み止めが効きません

心因性疼痛には痛み止めも神経障害性疼痛薬も効きません。精神に対する治療や適切な薬物療法が必要です。心当たりのある方は、心療内科・精神科への受診をご検討ください。

プレガバリンが「一石二鳥」になる理由

神経障害性疼痛に使われるプレガバリンという薬に、興味深い特徴があります。

このお薬の副作用のひとつが眠気です。夜に服用すると、痛みが和らぐだけでなく、副作用として「よく眠れる」という効果が現れる方がいます。

痛みと睡眠障害、両方に作用する「一石二鳥」

「副作用の眠気」が悪循環を断ち切る武器になる場合があります。痛みを取りながら眠れるようになる——まさに悪循環のふたつの課題を同時に解決できる可能性があるお薬です。ただし、すべての方に同様の効果が出るわけではありません。使用するかどうかは主治医とよく相談して決めてください。

薬に頼らない選択肢|不眠症の認知行動療法(CBT-I)

薬を使わずに悪循環を断ち切る方法として注目されているのが、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)です。考え方や感じ方、行動や生活習慣を変えることで、自然に眠れる力を取り戻そうという治療法で、副作用がないのが大きな特長です。

例えば「眠れないAさん」の場合、眠らなきゃという焦りから布団に入っても体や脳が緊張してしまい、眠れないからとスマホでYouTubeや動画を見て、かえって頭が覚醒してしまう——という悪循環に陥りがちです。6時間布団に入っていても、実際に眠れているのは2〜3時間、ということも起こります。

これに対してCBT-Iでは、次の5つのステップを行います。

01
睡眠時間を調整する
睡眠制限法

ベッドにいる時間=実際に眠っている時間に近づけます。布団にいる時間と睡眠時間を一致させることで、入眠が早くなります。

02
ベッドの使い方を見直す
刺激制御法

眠くなってから布団に入るのが基本。眠くなるまではソファなどで過ごし、脳を活性化させないようにします。

03
考え方の癖を変える
認知療法

「寝なきゃ」という焦りや不安を手放し、「眠れなくてもいいや」と気楽に構えられるようにします。

04
生活習慣を整える
睡眠衛生

朝の日光を浴びる、カフェインやお酒を控える、飲むタイミングに気を付けるなど、生活習慣を見直します。

05
リラックスする練習をする
リラクゼーション法

寝る前のストレッチや呼吸法で自律神経を整え、「この手順を踏めば眠れる」という入眠ルーティンを作ります。

この5つのステップを日々行うことで、スムーズに眠れる・夜中に目が覚めにくくなる・朝すっきり起きられる・日中の集中力が戻るといった変化が期待できます。簡単そうに見えて、実際に取り組むとしっかり効果が出る方法ですので、まずは信じて始めてみることが大切です。

薬に頼らず枕を変えるだけで改善した例

実は、枕を適切に合わせることで夜中に痛みで目が覚める症状が改善するケースがあります。

枕という毎晩使うものを、自分の体にきちんと合わせるだけで、痛み止めや睡眠薬に頼らなくてもぐっすり眠れるようになった患者さんが多くいらっしゃいます。実際、ヘルニアのあるスタッフが枕を調節し日中の姿勢にも気を付けたところ、1ヶ月ほどで改善が見られた例もあります。

悪循環を断ち切る枕の3条件:

  • 体に合った高さ
  • 適度な硬さ
  • 平らな形状

「なんとなく」で選んだ枕の高さが、悪循環の入口かもしれません

枕の高さがわからない時の正しい測り方|整形外科医が4条件と体格別の目安を解説

枕の高さが合っていないと、首・肩への負担から睡眠の質が下がり、痛みの悪循環を助長してしまうことがあります。仰向け・横向き・寝返りの3方向での正しい測り方と、失敗しない枕選びの4条件を整形外科医が動画つきで解説します。

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凹凸のある枕や柔らかすぎる羽毛枕は首の姿勢が悪くなり、寝返りが打ちにくくなるため、知らず知らずのうちに痛みの悪循環の原因になっている場合があります。枕で首の角度が良くなって神経が楽になるだけでなく、枕を合わせて眠りが深くなることで痛みそのものを感じにくくなる——これが、枕の調整で痛みが楽になる2つの理由です。

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痛みと不眠、両方を良くする3つのステップ

ここまで見てきたように、痛みと不眠は両方が影響し合う「掛け合い」の関係にあります。だからこそ、片方だけでなく両方をしっかり良くしていくことが大切です。そのための3つのステップをご紹介します。

01
両方をチェックする
状態の把握

眠れない方は整形外科などで痛みの程度を確認し、痛みがある方は睡眠科などで眠れているかどうかをチェックすることが大切です。

02
見える化する
記録・自己理解

スマートウォッチやアプリで睡眠の様子や痛みの強さを記録し、毎日の変化を把握することで、自分の傾向を理解しやすくなります。

03
治療を組み合わせる
個別化

認知行動療法・運動・生活習慣の見直し・栄養、必要に応じて専門家からのお薬も含め、総合的に組み合わせて睡眠を良くしていきます。

期待できる変化

眠りやすくなる、夜中に目が覚めにくくなる、朝や日中が少し楽になる、痛みの辛さが和らぎやすい——このような変化が期待できます。慢性的に眠れないことが痛みの感受性を強めてしまうことが科学的にも分かってきています。ぜひ「眠れない」と「痛み」の両方を同時に解決していく視点を持っていただければと思います。

よくある質問(FAQ)

Q 痛みで眠れないのはなぜですか?
A
痛みが強くなると睡眠が妨げられ、さらに睡眠不足になると脳の痛み感受システムが過敏になって痛みをより強く感じるという悪循環が起きるためです。慢性化すると、もともとの痛みよりもはるかに強い苦痛を感じるようになる場合があります。
Q 痛みと不眠、悪影響が長く続くのはどちらですか?
A
2026年に発表された大規模研究によると、痛みが睡眠に与える影響は3ヶ月〜3年程度の短期的なものである一方、睡眠の悪さが痛みを引き起こす・強めてしまうリスクは3年以上と長く続く可能性があることが分かっています。
Q 痛みの種類によって薬は違いますか?
A
はい、痛みは大きく3種類に分けられます。1.侵害受容性(けがや炎症による痛み)→いわゆる痛み止め(炎症鎮痛剤)が有効、2.神経障害性(神経損傷・過敏による痛み)→プレガバリンなどの神経障害性疼痛薬が有効、3.心因性(メンタルによる痛み)→精神科的治療・薬物療法が必要で、痛み止めは効きません。
Q プレガバリンは睡眠にも効きますか?
A
プレガバリンの副作用として眠気があり、神経障害性疼痛の方が夜に服用すると、痛みを和らげながら眠れるようになる場合があります。痛みと睡眠障害の両方に作用することで悪循環を断ち切れる可能性があります。
Q 不眠症の認知行動療法(CBT-I)とはどんな治療ですか?
A
薬に頼らず、考え方や行動、生活習慣を変えることで自然に眠れる力を取り戻す治療法です。睡眠時間の調整、ベッドの使い方の見直し、考え方の癖を変える認知療法、生活習慣の改善、リラックス法という5つのステップで構成され、副作用の心配がないのが特長です。
Q 薬を使わずに痛みで眠れない状態を改善できますか?
A
枕を自分の体に合ったものに変えることで、夜中に痛みで目が覚める症状が改善するケースがあります。体に合った高さ・適度な硬さ・平らな形の3条件を満たす枕にすることで、首や肩への負担が減り、痛みと睡眠障害の悪循環を断ち切れることがあります。認知行動療法と組み合わせるのもおすすめです。
Q 睡眠薬と痛み止め、どちらを使えばいいですか?
A
どちらを選ぶかは痛みの種類と程度、睡眠障害の状態によります。悪循環を断ち切るためにどちらかを使う場合でも、自己判断での服用はリスクがあります。必ず医師に相談した上で、症状に合った薬を処方してもらってください。
診察をしている山田朱織

「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」

16号整形外科院長 医学博士
(株)山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えしております。

本コラムの内容は動画でもお話ししています▼

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