救命救急の気道確保と適切な枕の首の角度の違いを解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
今回は呼吸がしやすい寝方のヒント、救命救急の気道確保の姿勢って本当に呼吸が楽なんですか?というご質問に回答をしていきたいと思います。
目次
顎を持ち上げて頭頂部を下げるような寝姿勢は良くない
救命救急の講習を受けたり、救急隊員の方が救命救急を施している時の気道確保のポジションから、寝ている時も同じような姿勢になるように顎を持ち上げて頭頂部を下げるようにしたらスーッと呼吸が楽なんじゃないかと想像してしまっていることも少なくないのではないかと思います。
この顎を持ち上げて頭頂部を下げるような睡眠姿勢は実はよくないことなのです。
救命救急の時の首の角度と睡眠時の首の角度は違うと考えています。
スニッフィングポジションと気道確保
例えば目の前に香りの良いバラが1本あったとしてどんな風に嗅ぎますか?
鼻を少し上に向けて頭を落とした感じで嗅ぐんじゃないかなと思います。
この姿勢(ポジション)で嗅ぐことでバラの香りの成分が鼻から喉、そして気道の方までスーッと効率良く入っていくんですね。
香りを嗅ぐときのポジションのことをスニッフィングポジションと言います。
アロマの研究やアロマを日常で使っている方はどこかで聞いたことあるかもしれません。
このスニッフィングポジションを香りだけではなく、救命救急の時の気道確保の時にも使っているんです。
どんな状況で気道確保が必要になるか
1、意識消失
第一に意識が消失して意識がない状態です。
つまり自分では自発的に呼吸ができなかったり、呼吸が荒くなっていたりということが考えられます。
2、呼吸抑制の薬
何かお薬を使うことによって呼吸ができなくなってる場合。
手術をする時に麻酔をかけた状態がそうですね。
お薬を注射で投与することによって、力が抜けて自分では呼吸ができない場合には気道確保が必要です。
3、嚥下困難
嚥下というのは、水や食べ物を飲み込む動作のことを言います。
何か病気があったり、高齢になるとだんだん飲み込むという動作ができなくなる方が多いんですね。
嚥下が困難になるとて気道確保しないと危ないということが起こります。
4、出血・異物の飲み込み
例えば子供がピーナッツを飲み込んでしまったり、何か怪我をしたり、大量な鼻血でもそれを飲み込むことによって息ができなくなってしまうということが起こります。この時も気道確保が必要なわけです。
気道確保の方法
手でやる方法
よく救急隊員の方が倒れてた方にやっていますが、道具は使わずに手で顎を上げて首の角度を変えて気道確保するという方法です。
エアウェイ
エアウェイという短いチューブをピッと鼻や口から入れることによって気道を確保するという簡単な方法もあります。
気道挿管
重篤になって長い時間気道確保しなければいけない場合は、気道挿管と言って機械で口の中を開けて長い管を通す必要があります。例えば手術の時などはそうです。
長いと6~8時間かかることもあり、手術をしている間は患者さんは自分で呼吸ができないので気道を確保するためには管を入れなければいけないわけです。
いろいろな気道確保の方法が段階的にあるということを知っておいてください。
気道確保の時の首の角度
では気道確保の首の角度を見ていきましょう。
もし道に倒れていて何の道具もない場所だったら、顎に手をかけて少し持ち上げて空気が通りやすくしてあげるという方法で気道を確保します。
手術などで長い時間気道確保しなければいけない時は気道挿管をするんですが、その時は枕を使ってもっと頭を高くして首の角度もつけて気道を確保します。
どちらも気道確保していることには変わりありませんが、何も道具を使わないで気道確保する時と枕を使って気道確保する時の首の角度は違うわけですね。
ただし気道挿管の場合に首の角度をつけるのは一時的な話です。
挿管して気道を確保した後は実は枕を取って普通の枕の高さに戻します。
ではなぜ首の角度を急にしているかというとそれには理由があるんです。
スニッフィングポジションが気道挿管のベストポジション
気道には口腔軸・喉頭気管軸・咽頭軸という3つの軸があります。
この軸がある程度バラバラでも一定量呼吸がしやすい状態は作れます。
しかし、気道挿管する時はこの3つの角度がなるべく一致しているときが挿管器具を入れやすいポジションなんです。
3つの角度が一致するポジションこそが、香りを嗅ぐときのスニッフィングポジションなのです。
要は気道を確保するために3つの軸を揃えるためにグーッと顎を上げて頭を下げるわけですが、実際にはこの姿勢が一晩寝る時に首にとってはいい角度ではないんです。
だからこそ、気管挿管した後は少し低くして普通のポジションに戻す方が多いわけです。
首が楽な角度はスニッフィングポジションとは違う
私たちが推奨している整形外科枕を使って首の角度を15度前後にしましょうというのは、一晩中首が楽で寝返りが打ちやすい首の角度にしましょうということです。
ですので救命救急や気道挿管する時に気道が見やすくするポジションと、枕を使って一晩寝るときのポジションとは別物なんだということを覚えておいてください。
気道確保を実践
実際にお布団の上で気道確保の方法を実践してみたいと思います。
道で人が倒れいて何も器具がない場合、首に怪我がないと確信できる場合の気道確保
頭部を下げて顎を上げます。これで呼吸がしやすくなるわけです。
頚椎に異常がある場合の気道確保
交通事故などで首の骨が折れたりずれたりという場合には最初の方法では首の骨に負担がかかります。
この場合は顎の下に指をかけて下顎を強調するという方法です。これだと首に直接力が加わらないので安全です。
ここでもしエアウェイがあれば管を入れることもあります。
手術時の場合の気道確保
手術の時の気管挿管の場合には枕を使います。
口腔軸と喉頭軸と咽頭軸の3つの軸が一致するように高さを合わせていき、管がしっかり入って気道が確保されたらここまで高いものは必要にないので低くして頭を下げます。
適切な枕を使用した際の首の適切な状態とは違うことがお分かりいただけるかと思います。
気道を確保するスニッフィングポジションと、適切な枕で寝るときの首の角度15度が違うんですよということを具体的にお話ししました。
気道確保の首の姿勢と寝るときの適切な姿勢は違う
どうしても気道確保という言葉のイメージが強くてその姿勢で寝れば楽かなと思うかもししれませんが、一晩中寝る時には首に負担がかかり適していないということです。
まだまだこの違いに関しては山田朱織枕研究所で科学的な検証をもっともっと積み重ねて、さらなる詳しいお話ができたらと思っています。
本コラムの内容は動画でもお話ししています▼
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