肋骨骨折の治療に肋骨テーピングの方法や注意点を解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
肋骨骨折の解剖と治療、テーピングを解説
今回は肋骨骨折についての解剖から治療まで、山田式肋骨テーピングというちょっと変わっていますが、とても有効な治療法についてもご紹介していきたいと思います。
ちなみに肋骨は英語でなんていうかご存知でしょうか。
リブステーキは皆さん食べたことありますか?実はリブは肋骨のことなんです。
リブステーキはまさに肋骨の骨の周りにお肉がついてそれを焼いたもの。リブという言葉は意外と親しみのある言葉なんですね。
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肋骨は大事な臓器を守っている
肋骨は何本あるかご存じでしょうか。
6本ぐらいかなと思う方もいるかもしれませんが、片側に12本両方で24本も実はあるんです。
背中から出た肋骨が胸の前まで来ているんですね。それがなんと12本も片側にあるわけです。
何をしているかというとその中にある肺や心臓などの内臓を保護して守ってるわけですね。
鎧のようなものといえば分かりやすいでしょうか。
中にある柔らかい重要な臓器を外の外壁としてしっかりと硬く守っているのが肋骨です。
背中にある胸椎という背骨から出た肋骨が、脇腹を通って前にいって胸骨に着きます。
肋骨は前の方に来ると肋軟骨という柔らかい素材に変わって肋骨から肋軟骨にくっついた後に胸骨という骨にくっついています。
背骨全体から前に回って内臓をくるむような形で全部を覆うような格好になっているわけです。
肋骨は折れにくい骨
肋骨骨折をしてしまった時、病院に行ってレントゲンも撮ったけどレントゲンでは肋骨骨折はしてないと言われたということは実は比較的よくあることなんですね。
肋骨というのは肺や心臓を守っているガードしているものなので、容易く折れてギザギザになって肺や心臓を損傷してしまってはいけないのです。
肋骨には非常に強靭な骨の膜がついています。肋骨の周りにある硬い膜を骨膜と言います。
膜が強靭に強くあるので例えば中にひびが入ったとしても容易に骨がずれてしまうことなく結構耐えてくれるんですね。
なので中にヒビが入った状態でもレントゲン上はずれてないので肋骨骨折ではないと言われがちなんですが、こういったものは骨膜化骨折と言って骨の骨膜の下で折れている立派な骨折なんです。
骨は折れてたんだけど骨膜が切れなかった状態です。
骨膜下骨折に対しても十分な治療をしてなるべく早く痛みを取ってあげることが日常生活の上で大切になってきます。
肋骨骨折の治療
ではここから治療についてお話したいと思います。先に申し上げておきますがこの肋骨骨折の治療というのは決して一般の方が自分でやることではありません。
このような治療法があるということを知っていただくことに重点を置いていますのでそこのところはご了承ください。
バストバンドで固定する
肋骨骨折の一般的な整形外科での治療はバストバンドというものを用いて肋骨を固定します。
例えば左の肋骨を骨折した場合、バストバンドを痛い側にこの面の部分を当ててぐるっと巻いてふーっと息吐いてください。
息を吐いて胸が小さくなったところで留めます。
しっかり肋骨を固定して安定させることで、折れてる肋骨がグラグラしないで痛みを取るというのがバストバンドの効果
なんです。
しかしバストバンドにはデメリットがあり、両側の肺を固定してしまうので息がしづらかったり、胸が苦しいという感じが出てしまうんです。
そこでできるだけ痛い側の肋骨の方だけを固定することができれば、折れているところは安定するし苦しくもないと考えられたのが山田式肋骨テーピングです。
元々は父であり整形外科医であった熊谷日出丸がこの肋骨テーピングを愛用していて私もその治療法を習ったんですね。
山田式肋骨テーピング
肋骨は背中から前にきています。そのどこでも折れる可能性があるわけです。
背中側の肋骨が折れることもあれば脇腹あたりが折れることもあるし、少し前が折れることもあるんですね。
折れた場所の肋骨の高さを中心にその上と下にテーピングをすることが必要になります。
テープを背骨の真ん中を超えるぐらいから、胸骨という真ん中をちょっと超えるぐらいまでの長さに切ります。
これを一番痛い骨折している部位の上と下に2~3本ずつ貼る形になります。
痛いところより少し上から始めていきます。
背骨の真ん中を過ぎたところから貼り始めて、あまり強く引っ張らずに前に来て胸の前を越えたところまで貼っていきます。
この時の大事なポイントはふーっと息を吐いて胸が小さくなったところで貼ることです。
そうすると片方の肺が膨らむのを抑えてくれるので肋骨の痛みが出ないのです。
少しだけ重なるようして2枚目3枚目と貼っていきます。重ねながら貼っていくので瓦版固定とも言います。
全部貼ったら端の剥がれやすい部分に縦に貼って留めます。これでテープが剥がれないようにするわけです。
折れてるところは安定し、反対側は楽に呼吸ができます。
片側だけ固定するので片肺固定という名前もあるぐらいです。
そしてテーピングの上からでも湿布は有効です。
一番痛い折れている部分にテーピングの上から水分の多いパップ剤のシップを貼っていただければ吸収されていきます。
いろんな治療法があるんですけれどもバストバンドという両方の肺を固定するのではなく、片方で済む山田式テーピングという治療法もあるのだということを覚えておいていただければと思います。
またご覧になられている整形外科のドクターの方いらっしゃったら、肋骨テーピングはもう20年近くやっていますし父と合わせると50年以上やっています。
中々いい方法ですので肋骨が痛いと言ってきた方に骨膜下骨折も含めて、このようなテーピングも有効に治療していただければと思います。
お風呂や固定期間は?
毎日張り替えることはできないのでお風呂は入ってもらって構いません。シャワーを浴びても構いません。
もちろん怪我した直後の1週間はあまり温まると良くないのでそこは控えてください。
出た後によくタオルで しっかり水気を取り
どのぐらい期間やるのかっていうことが患者様みんな不安に思うところです。
一つの目途として軽い骨膜化骨折だったら2~3週間、ポキッと折れてしまっている場合には1ヶ月から1ヶ月半ぐらいかかります。
大きな怪我や交通事故などの場合には何本も折れてしまうこともあるので、こういった場合は2ヶ月かそれ以上かかることもあります。
また高齢者の方で骨粗鬆症で骨が弱くなっている場合には、咳をしたり寝返りを打っただけでもポキッと折れてしまうこともあります。
そういった場合にも適切な治療を早くして痛みを取ることが重要です。
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