絞扼性末梢神経障害には薬の前に枕を試してみましょう
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
今回は「絞扼性末梢神経障害、薬の前に枕の治療を」というお話をしたいと思います。
しかし、手がしびれるからといって手根管症候群を疑うのは早いかもしれません。もしくは薬の前に枕を見直してみてもらうのもご検討ください。
鑑別診断のために受診をしましょう
手がしびれたときに絞扼性障害の一つである手根管症候群かなと思うかもしれませんが、どんな症状がどのような時にどういう風に起こるか、また他の病気もないかどうかっていうのを鑑別診断と私たち専門家は言いますが考えていかなければいけないんです。
もちろん症状がひどければ病院に行っていただいて、適切な検査をして確定診断がつけばいいことだと思います。
手根管症候群ではなく他の病気が隠れている可能性もあるので決めつけすぎないようにしましょう。
一緒に起こっている症状は何かありますか?
手のしびれ以外はどうでしょうか。
もし朝起きた時、肩こりや頭痛なども起こっている場合、もしかすると首の障害で起こってくるしびれというのも考えられるんですね。
手根管症候群や肘部管症候群がありますが、神経は首から出て肘や手首を通って指先に走っています。
首で神経が締め付けられた場合、肘や手首で神経が締め付けられた場合のどちらでも手のしびれは起こってくるんです。
ですので肩甲骨回りの肩こりや頭痛もあるとすれば、首の方で神経が締め付けられて肩や頭に向かっていく神経が痛んで障害が出ている可能性があると考えなければいけません。
神経障害が起こる原因
1、体の構造(解剖)
根本的な解剖と言って体の構造です。
例えば首と腰で比べると腰の方が神経の周りに広い余裕があります。
首の方が狭く、たった12ミリぐらいしか余裕がないのです。
そのため体の構造的に見てもやはり首の方がより神経が障害を受けやすいわけですね。
2、病気
例えば変形が起こってくる病気を例に挙げてみると、変形性頚椎症という病気があります。
首には骨が7つ並んでいます。その骨に加齢と共に変形が起こってきます。
骨に棘が出てきたり椎間板が潰れてしまって骨がずれてしまったりして、後ろにある神経がその変形により障害を受けるということが起こってくるのです。
ですので単に解剖学的な要素だけではなくさらに病気によってより条件が悪くなるわけです。
3、姿勢
首が悪い姿勢になることで障害が起こりやすくなります。
頭が前に倒れてに首がググッと曲がってしまうと、神経を締め付けてしまいます。
ただでさえ首は構造や変形により障害が起こりやすいのに、姿勢が悪くなることでより神経が棘に当たってしまったり締め付けたりして条件が悪くなってしまいます。
姿勢は自分でコントロールできる
体の解剖、病気、姿勢、こういったことが全て神経に障害を起こす原因となりますが、この中で一番大事なのは姿勢だと考えています。
なぜなら体の解剖は変えられません。
病気も年齢と共に起こってくるのをある程度予防はできますが、完璧に予防することはできません。
でも姿勢は自分で気を付ければちゃんとコントロールができるんです。
日中は起きていて覚醒しているので良い姿勢を取ろうと意識して直すことができますが寝ている間はそうはいきません。
そこで重要なのは夜間寝ているときの姿勢を左右する寝具です。
枕やお布団やベッドを自分の体に合ったものに整えることによって良い姿勢を取ることができます。
逆に言えば適切なものを使わなければ、寝ている間ずっと悪い姿勢になってしまっているということです。
首に一番影響を与える寝具は枕
枕を適切に整えることで夜間の首の姿勢を良くすることができれば、3つの原因で起こっている首の神経障害を防ぐ、もしくは軽くすることができます。
枕の高さによって首の角度が変わり、適切な約15度ぐらいの角度になると神経に対する圧迫や締め付けが和らいで症状がよくなることがあるのです。
首の姿勢を良くしても全く手の障害が取れないとすれば、そこで初めて私は手根管症候群や肘部管症候群を疑うわけですね。
ですのでまず手根管症候群なのか、首の病気なのか、もしくは単に枕が合ってないことで障害が出ているのかを確認するためにも、適切な枕を使うということが重要なのです。
私の外来にも毎日たくさんの手がしびれるという患者様がいらっしゃるんですが、適切な枕に変えることで手のしびれ腕やの痺れ改善する方も決して少なくはありません。
首の中に悪い変形が起こったり病気があったとしても適切な姿勢を取れることで障害が改善してしまうこともあるんです。
まずは診断が第一。その原因となっている診断を確定したら一番治療のインフラとなる枕を一人一人のお体に合わせることから始めましょう。
お薬や注射をしなくても、枕を変えるだけという体に影響を与えないような優しい治療で症状が消えたらこんなにいいことはないわけです。
適切な診断、姿勢を整えるインフラとなる枕、ここから始めてみてはいかがでしょうか。
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