ウォーターベッドのメリット・デメリット、枕はどうしたらいいのかを解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えします。
今回はウォーターベッドについて、ウォーターベットに興味を持っている方、これからウォーターベットも選択肢の1つとして購入考えている方、現在も使っている方、いろんな目的で見ていただけると思うんですが、改めて一から学んでいきましょう。
今回の情報はベターライフプランニングの乙川社長という日本のウォーターベッドの第一人者と呼んでも過言ではないぐらいウォーターベッドに詳しい方に色々なお話をお伺いお伝えしています。
目次
ウォーターベッドの歴史
ウォーターベッドと聞くと、ベッドの木の枠の中にビニールのバックがあって、その中にお水が満たされてるっていうイメージ持つ方が多いと思います。
その通りなんですがそれに限らず近年では様々な形のものが出ていて、用途・機能・色々進化しているようなんです。
ではウォーターベッドがいつ頃から使われているのか。
日本でも人気が出てきて皆さんがウォーターベッドを知るようになったのは約30年ぐらい前なんですが、実はもっともっと歴史は深いんです。
1851年に記念すべき第1回目のウォーターベッドの研究というのは行われていました。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中の羊水にポチャンポチャンと浮かんでいるのをまずイメージに作られたそうなんです。
その目的はというと、医療機関の方で高齢者の床ずれを治すための治療の1つとして研究されたようなんです。
床ずれというのは硬い敷物の表面と、お尻の仙骨という骨がこすれあって床がずれて潰瘍と言って皮膚がめくれて痛くなってしまう状態です。
床ずれは何百年前からあったわけですが、それを解消するために何か柔らかい物の上で寝ればいいのではないかと考えられたのがウォーターベッドというわけです。
ウォーターベッド発祥のルーツ
1960~70年代、アメリカの西海岸シリコンバレー辺りに当時ヒッピーという長い髪型で独特な格好をした若者たちがいました。
実はヒッピーの人達は少し反戦意識を持った頭脳IQの高い勉強のできる優秀な人たちでした。
その人たちが西海岸のカルフォルニア州とかの大学の校内で開かれたフェスティバルで、水を入れたバッグに人を寝かせてウォーターベッドだみたいなことで展示していたそうなんです。
その後、富裕層を中心にどんどんウォーターベッドは普及されていきました。
当時はアメリカ人の6人に1~2人は使ってたんじゃないかと言われるぐらい多くの人に使われてたそうです。
昭和の日本で言うとお布団屋さんが多くありました。お布団を打ち直したりして快適な状態にメンテナンスするお布団屋さんです。
あの感覚がアメリカで言うとウォーターベッド屋さんなんです。
街に1軒はウォーターベッド屋さんがあったそうです。すごく短なものだったんですね。
ウォーターベッドというのは買って終わりではなくメンテナンスが必要だった。
だから今でいうお布団の打ち直しと同じようにウォーターベッドもメンテナンスするためにウォーターベット屋さんが街に軒1あったそうなんですね。
いかにポピュラーな人気の商品だったかが伺われます。
そしてそれが遅れて日本に入ってきて、1970~80年頃に日本でも注目を浴びて多くの人がウォーターベッドを使っていました。
ただそこから色々な事情があってどうしてもウォーターベッドっていうのは少し現代になってだんだん使う人が少なくなって廃れてしまったっていうのが事実です。
一方で、もうウォーターベッドしか寝れないっていう方もいらっしゃるそうで、何十年もずっとウォーターベットを使ってるっていう方もいるそう
です。
ウォーターベッドの種類
シンプルに解説すると大きく分けて2つのタイプがあります。
ハードサイドタイプとソフトサイドタイプです。
サイドというのは外枠のことで、外枠がハードなタイプとソフトなタイプとなります。
ハードサイドタイプ
木のフレームのような硬い枠の中にビニール製のバッグが入っていて、この中に水が満たされています。
本当に水の中の浮力にポチャンポチャンと浮くような形です。
ソフトサイドタイプ
ビニールバッグがあるものとないものがあります。
側地はウレタンなどで包まれていて周りに硬いものがないのでソフトサイドと呼ばれています。
ソフトサイドタイプの中に入っているのはお水のみではなく、プラスチックのコイルやファイバー素材が入っています。
通常のコイルベッドのコイルは金属でできていますが、錆びてしまいますのでプラスチック製となったわけです。
乙川さんは濡れたコイルなんていう風に呼んでいました。
いわゆるコイルベッドと水だけのウォーターベッドの中間的な位置になってきます。
ソフトサイドタイプができた理由
ウォーターベッドの水に浮くためには相応の浮力が必要になります。
例えば40~50kgの体重の方からお体が大きい方だと80~90kgの方もいらっしゃいます。
浮力を出すためには水の深さが大事で、大量の水を使わなければいけません。
水の深さがないと人が浮かぶだけの水の量が確保できないので、深くすることがどうしてもハードサイドタイプの必須条件だったわです。
一方、ソフトサイドタイプではコイルやファイバーを入れることで浮力の調節ができるようになっています。
水の量がたくさんはいらなくなったので深さを浅くすることができるようになったわけです。
当然重さも軽くなります。
ソフトサイドタイプ私から言えばウォーターベッドのちょっとハイブリッド版みたいなイメージです。
単に水だけではないタイプのものが出てきたということで、この2種類含めていわゆるウォーターベッドと呼ばれています。
ウォーターベッドのメリット
1、体圧分散
ベッドだったらどんなものでも体圧分散は重要と言われますけれども、ウォーターベッドは特に体圧分散に優れているんです。
それを実現しているのはパスカルの原理というものです。
パスカルの原理とは、密封容器の中が水で満たされていた場合には容器がどんな形であっても全ての壁に均等に圧がかかるというものです。
人が寝たときに1番重たい部分は腰です。これは痩せ型でも少し体重が多くてがっしりした体型でも同じです。
つまりはパスカルの原理によって、重い腰、少し軽い背中、もっと軽い頭や足、全てを均一な圧で支えてくれるんです。
床ずれ防止のためにウォーターベッドが発案されたということもお話ししましたが、まさにその腰からお尻にかけて圧が集中しないようにするためだったんですね。
これはなかなか他のマットレスなどでは難しいことなので、ウォーターベッドの最大でかつ重要なメリットになると思います。
2、水温調節
水が入っているビニールのバッグの下には非常に安全なヒーターが入っています。
寒がりの方には嬉しい機能です。
1日中適度な温度を一定に保ってくれるので、ベッドに入った途端にもぬくぬくとあったかいんです。
夏はというと温度調節のヒーターを切っておけば、それだけでも水はひんやりと冷たく涼しく感じます。
夏の暑い時期でもウレタンやコイルのマットレスと比べると温度が上がらないんですね。
ですので夏中も涼しく快適に使えるようになっています。
衛生的
防腐剤を入れて水が腐らないようすることができます。
またお布団だったらカビやダニなど衛星的に不衛星になることもあると思いますが、ビニールのバッグですのでその心配はありません。
綺麗に表面を拭いておけば衛生的にベッドを使い続けることができます。
ウォーターベッドのデメリット
1、高価
30万円台ぐらいから60~70万と上限は色々ありますが、どうしてもお布団やかコイルマットレスと比べると売ってるところも限られるし、値段も比較的高価な価格帯になるのは否めません。
設置の手間
一般の方がウォーターベッドを買ってきて、ご自身でパパッと作るというわけにはいきません。
まずはウォーターベッドの重さに耐えられる床の状態かを確認する必要があります。
床があまり強くないと、事前に一定の補強工事をしておかなければいけないこともあります。
木造の建築だとそこは心配なところです。
そういった事前の確認や工事、実際に置いて水を貼って完璧な状態で使えるようになるまで手間がかかるというところが一般のマットレスと違う難点です。
維持費用
一般的なマットレスだったら買ってきて設置すればそのまま何年も使えますが、ウォーターベッドの場合は色んなコストがかかってしまいます。
電気代や水道代、部品代や修繕代、水の交換だけでもご自分でできないとメンテナンスに来てもらわないといけないのでその費用、そして中に入れる水が腐らないようにする防腐剤の費用と多くのコストがかかってきます。
電気代については冬ですと毎日ヒーターを付けっぱなしにするのでそこそこ電気代がかかります。
使い方にもよりますが、月2000円程度電気代が上がるという試算が出ております。
諸々含めると年間平均3万円ぐらいの維持費用がかかるとも言われています。
ですのでその辺りの懐具合もきっちりと考えた上で購入しないと、買ったはいいけど維持費がかかって手放さないといけないみたいなことにもなりかねません。
事前によくご検討ください。
一緒に寝る場合のデメリット
ウォーターベッドは憧れがあって、将来的にはパートナーと一緒にウォーターベッドで寝ようかなと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それには心配な点があります。
寝返りの揺れ
ウォーターベッドで2人で寝てしまうと1人が寝返りを打つとその波動が伝わって揺れてしまうんですね。
ですので寝ている間その揺れが気になったり、特に少し酔いやすい方だと自分だけの寝返りだったらコントロールできても、他の人から来る不意打ちのような寝返りと波動は気分が悪くなってしまうということもあるのでなかなか難しいところです。
設定温度
冬はヒーターを付けますがどうしても2人で寝てると快適な温度って違ったりします。
女性は寒がり男性は暑がりみたいな例ですと、温度の設定を何度にするかで少々揉めてしまったり夫婦喧嘩の原因になってしまう恐れがあります。
おすすめはデュエットタイプ
ウォーターベッドをどうしても使いたいという場合は、中のバッグが2つに分かれているデュエットタイプというのが最近では出ています。
これであればご主人が使うバッグと奥様が使うバッグで水量も変えられますし、ヒーターの温度も別々に設定できます。
一緒に寝たいという方にはデュエットタイプがおすすめです。
ウォーターベッドで枕を使ったらどうなる?
布団・コイルマットレスの場合
山田朱織枕研究所ではMAKURAinBEDというオーダーメイドのマットレスやコイルのマットレスも扱っております。
中がコイルのバネになっているしっかりした腰の沈まないコイルマットレスや敷布団で寝た時は、枕の高さは上向きでは首の角度が約15度ぐらいにするのが最適ですよという話をしてきました。
もちろん横向きのバランスや寝返りの打ちさすさも確認して最終的に枕の高さを決めますが、これはあくまで腰をしっかり支える硬さのあるマットレスの場合だったんです。
これがウォーターベッドだとどうなるかですが、ウォーターベッドには2種類のタイプがありますので分けて考えなければいけません。
ハードサイドタイプの場合
体が沈むので低い枕が必要なんじゃないかと思うかもしれませんが、ハードサイドタイプにおいては私の見解では何の枕もいらないんじゃないかと思います。
冬はヒーターを入れて頭が熱くなるので、タオル敷いていただいて熱がこもらないようにはした方がいいんですが、いわゆる高さという意味 では必要ないんだと思うんですね。
これは理論としては枕を使わなくても首の角度が適度に15度近くになるということです。
20年ぐらい前にNHKの試してガッテンというテレビでこのテーマについて取り上げていただいたことがありました。
その時にヨーロッパにある塩分濃度の高い死海をプールで再現して、実際に水浮かんだ時の首の角度を測ったんですね。
そうすると水の上ではなんと首の角度が15度になったんです。
試してガッテンで実証された事実ですので、おそらく同じようにウォーターベッドの水に浮かんだ状態だと15度ぐらいになるのではということです。
ソフトサイドタイプの場合
水だけではなくコイルやファイバーが入って浮力を調節しているので、だんだん枕が必要になってくるんです。
ウォーターベッドで枕なし、コイルベッドで体格に合わせた高さ、この中間の水とコイルの混ざったものですからなかなか調節が難しいです。
ここはご自分で寝返りが打ちやすいか、上向きで苦しくないか、横向きで体軸がずれないか、これらの条件を元に丁寧に枕の高さを自分決定しなければいけません。
整形外科医がおすすめのタイプはどっち?
これはあくまで整形外科医としての私の意見ですが、やっぱりハードサイドタイプの水だけの入ったウォーターベッドをおすすめしたいなと思います。
理由としてはウォーターベッドを使おうと思うんであれば、最大限に浮力を利用した状態で寝ていただけたらと思うからなんです。
水の浮力の力によって人間の体の体圧が分散されて、もし同じ姿勢でずっと寝ても床ずれができないというのは魅力的な効果です。
プラスチックのコイルやファイバーで揺れを防いで酔わないようにハイブリッドにしていくていうのは対処方法としてはありかもしれませんが、
やはり本来の浮力そのものの力はだんだん落ちていくわけです。
ですので私はウォーターベッドはハードサイドタイプを使ってもらいたいなと思いますが、購入する際はカタログで選んで買うのではなくて店頭に行って実際に寝て選んでください。
水の浮力で動くことで気分が悪くなったり、体調が悪くなったり、時にはめまいが起こる方もいるのでそういった体調不良が起こらないか
をじっくり体験することが重要です。
ハードサイドタイプで実験
実際に当院に置いてあるウォーターベッドのハードサイドタイプタイプに寝ていいただき首の角度を見てみましょう。
枕なしで寝た場合
ハードサイドタイプの場合は枕をしなくても首の角度がおよそ15度になることが分かります。
枕をしていなくても首の姿勢がいいのでつらいことはなく、息もしやすく後頭部から首肩どこかに力が入ってしまうことはなく力が抜けて
リラックスできてます。
体圧が分散されて全身がリラックスできています。
冬場の場合はヒーターを付けて温度を上げますので、体は快適なんですが後頭部頭が暑いということが起こります。
そんな時は熱を少し防御するために薄いタオルなどを敷いていただくと快適です。
枕の高さには影響しない程度の2~3mmまでのものであればよろしいんではないかと思います。
整形外科枕で寝た場合
整形外科枕のいつもの高さで寝てみると、体が沈むので枕がかなり高くなってしまい喉が圧迫されて呼吸が苦しくなります。
後頭部をグっと押されるので後頭部の圧迫も強くなります。
これでは上向きでは苦しくて眠れません。
では横向きではどうでしょうか。
いつもの敷物では高さが適合し体の軸が布団の面と平行になっているはずなのに、ウォーターベッドでは肩や腰がグーンと下がるので平行ではなく頭が上がって顎と胸が下がっています。
やはりそのままの高さでは相対的に横向きでも高すぎるということが起こるわけです。
ウォーターベッドのように柔らかいマットレスの場合には、どうしても重たい腰がグーンと下がってしまうので体圧分散はできても日頃のお布団やコイルマットレスで合っている枕は使えないということがわかります。
柔らかい羽毛枕で寝た場合
では柔らかい枕ではどうなるかというとこれでも同じです。
柔らかい分沈み込みはするものの、結局は頭・鼻・顎で見れば軸は曲がってしまっています。
体の軸が曲がっているのでこれではやはり不具合です。
ウレタンの凹凸枕で寝た場合
凹凸枕を入れてもやはり頭・胸が下がってしまいます。
寝返りも見てみましょう。
腰が先に転がってしまって、枕から頭が落ちそうになります。
寝返りはかなりしにくくなってしまいます。
整形外科枕に変えてみると凹凸枕に比べれば少し打ちやすくなるようですが、これでもちょっと踏ん張る感じで力が入ってしまいます。
要は浮力で支えている体の方と、相対的に高くなってしまった枕に支えられている首の軸が曲がってしまうことで、コロコロと寝返りを打つことはできなくなっているのです。
やはり寝返りを比べても枕なしが一番やりやすく、寝姿勢も良いという結果になりました。
本コラムの内容は動画でもお話ししています▼
おすすめ関連コラム
-
「5mmを調整する枕」
靴は5mm単位で自分のサイズを決めているのに。
オーダーメイド整形外科枕
365夜、あなたの首を支えているのは枕だけ。
医学的研究と臨床経験の中で生まれた当社の計測方法は、
あなたにジャストフィットする、5mmを調整します。