枕が高いと危険?殿様枕症候群と12cm・15cmのリスクを医師が解説
16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

今回は殿様枕症候群(とのさままくらしょうこうぐん)について、高くて硬い枕は脳卒中の原因になるということを前回は論文をご紹介したり、どういうメカニズムで起こるかということをお話してまいりました。
実際に高い枕で寝るとどうなるか今回は実験をしてみたいと思います。
殿様枕とは?

殿様枕症候群とは、脳卒中の原因となり得る特発性椎骨動脈解離(とくはつせいついこつどうみゃくかいり)が起こりやすくなるという知見を指します。
関連する論文では、12cm と 15cm の枕を用いて比較し、特に 12cm で発生リスクがおよそ2倍、15cmでおよそ9倍に高まる可能性が示されています。
なぜ高い枕で起こりやすいのかという点については、高い枕で首が引っ張られ、さらに寝返りという回旋運動が加わることで、首の後ろを走る椎骨動脈にねじれや牽引が生じ、血管が傷つきやすくなると考えられています。
なお、論文では各被験者が自宅で使っている枕の高さを「頭を乗せない状態」で測定しており、実際に頭を乗せると枕は潰れます。著者らは、潰れた時の高さが最初の高さから半分以上低くなるものを「柔らかい」、半分も潰れないものを「硬い枕」と呼んでいます。一方、私の見解では、半分に至らなくても3分の2程度まで潰れるものでも相当に柔らかいと考えます。
この話題は、2024年2月に国立循環器病研究センターの田中智貴先生(内科)がヨーロピアン・ストローク・ジャーナルに発表された論文を契機に大きな注目を集めました。非常にアカデミックで意義のある研究だと感じています。
ところで「殿様枕」と聞くと、時代劇で見かけるような、木の台に綿を載せた高い枕を思い浮かべる方も多いでしょう。江戸時代には、木の箱状の台の上にクッション性のある層を重ねたものや、木だけのものなど、とにかく高さのある枕が広く用いられていました。髷(まげ)の形を保つ目的もあり、高い枕が主流だったようです。
当時の記録には「寿命3寸 楽4寸」という言葉も残っています。健康のためには3寸(約9cm)がよいが、楽なのは4寸(約12cm)という意味で、枕の高さと体の感覚・健康の関係に人々が気づいていたことを示す興味深い表現です。
殿様枕症候群とは?
先生の論文の要点をまとめると、枕が高くなると脳卒中、出血の原因の1つである特発性椎骨動脈解離という病気が発生する確率が高くなるというものなんですね。
この論文の中では12cmの枕と15cmの枕の2つの枕を用いて比較しているんですが、特に12cmを使った時には特発性椎骨動脈解離が約2倍起こりやすい。
また、15cmを使うとなんと9倍起こりやすいという驚くべき結果が出ているんです。
ちょっと恐ろしいですよね。
なぜ枕が高いと起きやすいか

先生の考えてらっしゃる内容としては、高い枕をすることで首が引っ張ることが原因と言われています。
さらにそこに寝返りという回旋動作が加わると、首の後ろにある椎骨動脈という血管が引っ張られねじれ、そして物理的に切れやすくなるということです。
私は整形外科医なので、どうしても「枕と神経」について考えてきました。
しかし、血管に与える影響も非常にあるんだっていうことを今回この論文を通して知りました。
すごく驚くとともに、とても重要な知見が今回多くの一般の方々にも、学術系の方々にも知らしられたということは素晴らしく良いことだと思っています。
整形外科枕で作ってみる

整形技科枕で12㎝と15㎝の高さを作ってみると見た目でもかなり高いです。
私からすると考えられない高さです。
当研究所の研究内容では、あくまで平均ですが女性の方が平均6cm、男性の方が7.5cmとなっていますので、15㎝とか12㎝っていうのはその倍ぐらいの高さがあるわけです。
これで一晩寝るなんてちょっと考えられないですよね。
整形外科枕で高さ実験

論文の中で使われていた12㎝と15cmを整形外科枕で作ってみるとこんな感じになりました。
12cmと15cmですが高すぎますよね。
今回は普段整形外科枕を7cmで使っているスタッフに実際に寝ていただき体験していただきます。
論文では上向きだけを言っていますが、実際に血管が切れるっていうのが寝返りを打った時だそうなのでその寝返りも体験していただきます。
いつもの枕の高さ7.0cm
まずはいつもの7cmの枕から始めてみます。
上向きで大事なことは喉が苦しくないこと、後頭部から肩にかけて不快なほど硬く感じないこと、そして枕の角が当たって痛くないことです。

息もしやすく後頭部も硬くはないようです。
角も当たらずお楽なようです。

次に横向きになっていただきます。
おでこ、鼻の頭、胸までがほぼ一直線となり、寝ている画正面と平行になっているので横向きもぴったりです。
肩の圧迫感やお顔の圧迫感もないようです。
右と左の首筋が引っ張られるような違和感も出ていません。

では寝返りをしてみましょう。
右左に動いていただきます。
肩と骨盤がブレずにスムーズです。ぎこちない感じはありません。
12㎝の枕の高さ

では整形外科枕を重ねて12㎝にしてみます。
上向きでは先ほどと比べてかなり喉が詰まって苦しそうです。
後頭部や首の当たりも強く硬いようです。
そして後頭部頭の後ろの血管が引っ張られている感じがします。
おそらく突っ張ってるのは首の筋肉で感じることなんですが、筋肉が突っ張るということはその中にある血管もやはり突っ張るということです。

では横向きお願いします。
明らかに12cmの枕では頭が持ち上がって、体の軸が乱れてしまいます。
完全にこれでは高すぎるという状況に見受けられます。
頭が高く、胸が落ちて、また骨盤で上がるという湾曲化すると、軸が一直線ではなくなるのでおそらく寝返りもしにくいはずです。

では寝りしてみてください。
かなり寝返りはやりづらそうです。
肩が先に寝返りして骨盤が後から追いかけてくる感じになっています。
大きな力を骨盤で出さないと最後まで寝返りができないということが起こります。
12cmの枕厳しそうですね。
では、もっと厳しい条件15cmいきます。
15㎝の枕の高さ

もはやこれは枕とは呼べない世界になってきてます。
12㎝よりもさらに首の後ろが突っ張ってしまいます。
見た目からしても血管切れるっていのがなんか分かるような気がします。
喉もかなり苦しいようです。

横向きお願いします。
もう横を向いた瞬間に耳が痛くなっています。
耳や頬、顔面が圧迫されてしまいます。
肩が浮いてきて圧迫はないですが、下になってる首筋が突っ張っています。
逆の上の首筋も圧迫されています。
首にかなり負担が出ているようです。
これではおそらく短時間しかいられないと思います。

では寝返りお願いします。
体がきこちない動きになっています。
上半身と下半身がばらけてしまっていて軸が通っていません。
一生懸命力を入れないと体の向きを変えられなくなってしまっています。
とても寝返りと呼べない状況です。
おそらく朝を起きると枕がずれてしまったり、完全に飛んでしまって頭が落っこっちゃうんじゃないかなと予想されます。
合ない枕を使うと朝起きた時枕がなくなっているはずです。
そのような枕は寝る前から体に合ってなかったんだとご判断ください。
殿様枕症候群ということで、枕が高くなると血管が切れて出血してしまって脳卒中が起こるリスクが高いということが今回の実験で分かりました。
この論文は大変有意義で内科のみならず整形外科のドクターもとても興味を持って読んでいらっしゃるようです。
是非このような素晴らしい論文が多くの一般の方々に示唆となり、枕選びに貢献していただければすごく嬉しいと私も一整形外科医として思ところです。
皆さん高すぎる枕は危険ですので、お体格に合った高さの枕を使いましょう。

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「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」
16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、
睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることを
できるだけそのままお伝えしております。
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