コラム詳細

体に何もつけずに“眠り”が分かる!整形外科医×睡神デルタ開発者が語る最新技術

16号整形外科院長であり山田朱織枕研究所代表の山田朱織(やまだしゅおり)が解説します。

今回は睡眠計測サービス「睡神デルタ」の開発者であるヘルスセンシング株式会社・鐘ケ江社長をお迎えし、装着不要で“眠り”を可視化する新しい計測技術について詳しくお話を伺いました。

目次



「睡神デルタ」という名称について


山田:こちらの睡神デルタですが、もう当社でも何人かお客様に使っていただいて高い評価をいただいております。

睡神デルタというのは少し変わった名前かなと思ったんですが、この名前にはどんな思いが込められているんでしょうか?


鐘ケ江社長:まず眠りの神様という意味を込めて「睡神」という風にしております。

そして、英語表記では国際性も考えていて、SHINやJINだと海外の方は読みづらいので"ZIN"といたしました。

デルタというのは睡眠中の深い睡眠の時に出てくる脳波をデルタ波と言い、デルタ波が多いと良い睡眠とされることからその名前を取って睡神デルタといたしました。




睡神デルタは何を計測している?

山田:この睡神デルタは何を測ってるのか、一般の方にも分かりやすくご説明いただけますか?

鐘ケ江社長:これはベッドマットレス下に敷いて全く被験者に負担がない状態で測定でき、睡眠の状態を非常に科学的かつ正確に測定するというために作られたものでございます。

まず睡眠の状態とは一体何かというと、深い睡眠と浅い睡眠、あるいは記憶が定着されると言われるレム睡眠、そして覚醒状態といういくつかの段階があります。

一晩の睡眠のその段階を正確に分類分けして測ってデータ化しています。

山田:なるほど、まずは覚醒しているところから眠りに入り、そしてだんだんに深い睡眠になり、また違うレム睡眠というものもあって睡眠は構成されている。

それがどんな割合になっているのか科学的に解析できるということですね。




非接触センサーにした経緯

山田:睡神デルタは脳波ではなく、寝返り・呼吸・脈拍を計測しているということですが、そこに着目した経緯というのは?

鐘ケ江社長:1番医学的に正確なのは脳波なんですね。実際病院では脳波で測定するというのが非常に一般的になっていて、その検査をポリソムノグラフィー検査(PSG検査)と言います。

脳波の他に筋肉や心臓の動きなどを測るセンサーや、呼吸を測るベルトを胸腹部に巻いたりして体をがんじがらめにして一晩検査入院するという方法なんですけども、病院ではできるんですが当然普通にご自宅ではできません。

そこで自宅にいても簡単に測定できる方法を研究し、一切体にくっつけないで測定できる非接触センサーを開発いたしました。

山田:私の外来の患者様の中にも無呼吸の検査で病院に泊まったという方がいて、いつもと環境が違ってセンサーもいっぱいつけられて全然寝れなかったのに検査した結果って本当に正しいのかなと疑問を持ってる方もいらっしゃいました。

なのでご自宅でいつもの環境でリラックスして計測できるのはすごく素晴らしいと思います。




他の睡眠計測機器との違い

山田:簡単なもので言うと最近は手首につけるリストバンド、もしくは指輪型なども出てきてますがそういったものとの差というのは?

鐘ケ江社長:やはり根本的に体にくっつけるかくっつけないという違いがあります。

リストバンドや指輪型は脈を測定する方法で簡便化された計算方法でやられています。

計算の仕方というのは睡神デルタの方がずっとまた複雑でより正確に計算されております。

山田:脳波に近い形で正確なデータが取れるということですね。

鐘ケ江社長:そうですね。病院での検査は一般的に脳波が多いんですけど、2~3割ぐらいは心臓系から測ります。

心臓の動き、脈動を測るというのもあるんですね。

その脈動を測るというのは医学的には完全に認められてる方法でございます。

山田:動き、振動っていうことで言うと、肺と心臓と寝返りを含めた体の大きな動き、この3つの動きをちゃんと正確にどの動きかを見極めていらっしゃるってことですよね?

鐘ケ江社長:そうですね。出てくる信号をどんどん分離していくんですね。

心臓の要素であるとか、呼吸の要素であるとか、体動の要素という風に自立神経活動、自立神経の動きを示すような指標も導入してございます。




睡眠計測の研究について

山田:御社と九州大学医学部さんと共同で研究されたとのことで、科学的な世界的にも有名なネイチャーという雑誌にも掲載されたという風に伺っております。その研究はどんなものなのでしょうか?

鐘ケ江社長:先ほど申しました病院でやっている一晩の検査入院がありますね。

その時にこのセンサーをベッドマットレスの下に敷いて同時測定をするんです。

そして同時測定しますと、このセンサーで計測したデータとポリソムノグラフィー検査の関係性が非常に明確になってくるというものです。

その数は約300名の患者さんを中心にして行い、1年間ぐらいデータを積み上げていってそれが基礎的なデータとなっています。

それをベースにして、睡眠モデリングというのをAIを使って行います。

色んなトライアルをやって、1番いいのが総方向的なLSTMという方法であることを見い出して、それが基となり論文になりといったところでございます。

AIにもジャンルがありますので、何でもいいわけじゃないんですね。

どのAIを使うかで解析方法は違っていろんな結果が変わってくるんです。

その中で1番ベストだというものをいろんなノーハウを積み重ねながら思考錯誤しながら作っていってるというところがポイントになっています。

山田:なるほど、簡単に言うと非常に難しくて精度の高い根拠のあるデータを解析しているんだけれども、それが使うユーザー側にとっては簡単な形で見えるものに落とし込んであるっていうようなイメージでよろしいんでしょうか?

鐘ケ江社長:そうです 。さらに付け加えますと、最初は九州大学医学部との共同研究でやって、それを端としまして現在も研究は続いていて、今は東京科学大学医学部の国域内科の先生方とさらにブラッシアップするようなことでやって、現在使われてるのはブラッシュアップされた最終形ものでございます。




無呼吸のデータについて

山田:拝見した論文の中では、睡眠に関してはかなり精度が高い結果になっておりましたが、一方で無呼吸に関してはもう少しデータを積み重ねた方がいいだろうというところですか?

鐘ケ江社長:そうですね。やはり無呼吸というのは血中酸素濃度から算出するものですから、血中酸素能度を直接測定した方が非常に分かりやすいんです。

その値はSpO2と呼び指先にくっつけて測るのがポピュラーなんですけど、これもやっぱり一晩中となるとストレスですし途中で外れたりすることもありますので、やっぱりつけないで測れるのが一番理想系なんですね。

やはり同じようにディープラーニングというようなAI技術を使って先生方と研究してやっていて、医学的にこれは絶対間違いないというところまでは無呼級の場合は至ってませんけど、かなり近いところまで出来ています。

年々データも積み重ねより精度が上がっていってるっていうプロセスというところだと思います。




中小企業優秀技術・新製品優秀賞の受賞

山田:中小企業優秀技術・新製品の優秀賞を受賞されたそうでおめでとうございます。それはどんな賞なんでしょうか?

鐘ケ江社長:これはですね、りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社が中小企業の技術を振興し、わが国産業の発展に寄与する目的で主催しているものです。

全国から300社ぐらいの応募があるんですが、私のはトップ10の中に入る優秀賞というのに選ばれました。

山田:そうすると3%ぐらいの確率で選ばれたわけですね。すごいですね。

鐘ケ江社長:おそらく色々と科学的にやってる部分や治験を非常に大切にしてるとか、そういうところを含めて総合的に判断されたのではないかなと思います。

当然、面談とか会社訪問とかそういうの通じて、間けてやってらっしゃいます。


山田:じゃあもうその製品だけを見てっていうよりも、作られてきたプロセスとかどんな思いで作られているかとか色んなことを評価していただいていいたということですね。

鐘ケ江社長:この賞をいただけたのはやはり嬉しかったですね。社員の皆もそうですし、苦労が実ったかなという感じがいたしました。




これからの展望について

山田:鐘ケ江様がこの睡眠計測というものも含めていろんなエンジニアリングをなさってきた中で、これからの展望とか改良点など、これからどういうふうにやっていこうみたいなお気持ちがあればお聞かせください。

鐘ケ江社長:そうですね、これをいかに世の中に役に立てていくかというところが最大の関心ごとでございます。

やはり眠りを改善したい人とか悩んでる人とか不眠症とかそういった方々の為、また枕のような寝具との関連性を見つけていくというところが技術的な課題になってくるかなと思います。

将来的には高齢化社会になっていく中で、高齢者の方というのはなかなか腕輪をするとか体に何か付けるというのはあんまり好くまれないし、何か病気で付けられないということもありますので、体にくっつけないで計測できるということはそういった方々にもそれなりに価値があるんではないかなと思っております。

良い健康状態を睡眠計測を通じて保ってもらって、健康寿命を延伸していただくというのが大きな夢ですね。

山田:もう十分に1歩2歩踏み出していらっしゃるのではないかと思います。

ますますこのセンサーが宣伝されて改良点も含めて、そして社会にどんどん広まっていくことを本当に私たちも希望しております。

非接触で体に付けないっていうこともなんですけど、使い方が簡易である点もご高齢者の方々に大事かと思います。

患者様の中でもご家族の方と住んでる方もいるんですけど1人で生活してる方も結構いらっしゃっいます。

そういう方が、自分はなんであまり眠れないんだろうとか、夜中に何度も起きて辛いだけど何が原因がさっぱりわからないっていう時に、このサービスであれば簡単に自分の睡眠を確認できるので高齢者にも優しいシステムだと思います。




患者様への紹介について

鐘ケ江社長:逆に今度は私の方から山田先生にご質問させていただきたいと思います。

先生は普段いろんな患者様を診断されていらっしゃいますが、この睡眠計測をどのような患者様にご紹介できるとお考えでしょうか?

山田:当院は整形外科なので一般的には肩こりや腰痛で来られる方が多いわけですけれども、中にはやっぱり不眠というキーワードでいらっしゃる方もたくさんいます。

中にはご家族の方が一緒に来てる家族が無呼吸という言葉を使う方もいて、その方々の背景としてはしっかり睡眠外来にかかって検査している方もいれば、家族が気がついたり自分もおかしいなって思いながらもどうしたらいいのかわかんないっていう方もたくさんいらっしゃるんですね。

症状としては、まず昼間の眠気、朝起きた時の頭痛、中途覚醒が多い、もしくはなかなか寝付けないなど色んなキーワードあるんですけども、そういう方々が本当に病院に行くべきレベルなのか悩まれるような段階であれば私はまずこの睡眠計測を使っていただいて、どのレベルに自分がいるのかを客観的に知っていただくことが大事だと思っています。

それこそがまさに睡神デルタの役割かなと思います。




睡眠レポートの活用について

鐘ケ江社長:睡眠計測の結果を色んな診断される中で、先生としてはどのようなアドバイスをされていらっしゃるんでしょうか?

山田:実際に使ってレポートを見たときに、専門的な用語を勉強されて分かってらっしゃる患者様もいればそうでない方もいるかと思います。

非常にこのレポートが分かりやすいのは、最終的にスコアが出るところだと思うんですね。

まずはこのスコアを見て全体的に自分がどのぐらいの良いところにいるのか悪いところにいるのかというのを知っていただく。

その中でもう1段階細かく見ていった時に何が問題なのかわかるわけですよね。

寝るまでに時間がかかっているのか、布団の中にいる時間は長いのに実はこれだけしか眠れていないっていう効率の部分であったりとか。

私も枕は専門ですけれども無呼吸であったり不眠症のスペシャリストではないので、そこから先はやっぱり専門の病院をご案内するっていうことをしたいんです。

実は睡眠のスペシャリストっていうのは非常に難しくて呼吸器科や精神科だったり、実は睡眠外来を受ける時にそのドクターがによってそれは問題ありませんって言われちゃったり、それは問題で治療が必要ですとなったり違うと思いますんですよ。

その住み分けができるのが私の役割かなと思っています。

鐘ケ江社長:そういう非常に広い範囲で睡眠が関わっているということと、そしてそれを適正にいろんな専門の先生方にこう分類されていくというような仕事っていうのは、先生でないとできないかもしれませんですね。

これが少しでもお役に立てれば私共としては本当に幸せでございまして、先生にそれを推進していただくということに対しても大変感謝申し上げます。

山田:やっぱりどんな分野でもそうだと思うんですけど、基礎をしっかり研究したり結果を出せる科学者の方たちと、私たち臨床家っていう患者さんに直接対面している人間とか、そういう立場・役割が共同してこそ、最終的に患者様にとって幸せな結果が出ると思いますので、是非とも今後とも一緒にご協力させていただきながらやっていければと思います。

鐘ケ江社長:今後ともよろしくお願いいたします。




ドクター考案の『整形外科枕』による症状の改善

山田朱織枕研究所では整形外科枕という、睡眠姿勢によるさまざまな症状の改善を目的としたオーダーメイド枕を提供しています。

整形外科枕は16号整形外科の山田朱織医師監修のもと、開発されました。

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  • 診察をしている山田朱織

    「山田朱織(やまだしゅおり)とは?」

    16号整形外科院長 医学博士
    ㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
    治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、
    睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
    普段から診察室で患者様にお伝えしていることを
    できるだけそのままお伝えしております。


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