夏に睡眠の質が落ちる原因は運動不足?アデノシンと睡眠圧のメカニズム、改善に効く3つの運動を解説
夏の睡眠の質低下、意外な原因は「運動不足」
結論から言うと、夏の睡眠の質を悪くしている原因の1つが運動不足です。「暑くて寝苦しい」という体感の裏で、日中にほとんど体を動かさない生活が続くと、夜になっても自然な眠気が湧きにくくなります。単に夜暑いから眠れないのではなく、日中に運動しなかったことのツケが夜に回ってきている、というのがポイントです。
夏はクーラーのある涼しい場所で過ごしたいという気持ちが強くなります。7月から9月ごろまで続く暑さの中で、わざわざ外に出て運動しようとはなかなか思えないものです。テレビやYouTubeなどで熱中症のニュースを目にする機会も多く、外での運動を怖いと感じる方も少なくないでしょう。
なぜ夏は運動不足になりやすいのか 3つの原因
夏に運動不足が起こってしまう原因は、大きく分けて3つあります。
高温多湿の日本で猛暑にもなると、体がだるくて動けず、クーラーの中でないと活動できないという体側の問題があります。
クーラーの効いたオフィスに8時間ほどいると体が固まり、筋肉が硬くなって関節や節々が動きにくくなることで、より運動しにくくなります。
特に高齢者は熱中症への心配から外に出ないようになり、あまり歩かなくなることで運動不足に陥りやすくなります。
これら3つの原因によって昼の活動量が下がると、それが結果として夜にも影響し、睡眠障害の引き金にもなってしまいます。
運動不足が夜の睡眠を悪くする科学的な理由
運動不足になるということは、適度な疲労がないということです。この「適度な疲労」は、実は睡眠にとってとても大事な役割を果たしています。適度な疲労がないと、眠りたいという気持ち、つまり睡眠欲求そのものが起こりにくくなってしまうのです。
日中の活動量が少ないと、眠りを促す睡眠物質が十分に溜まらず、夜になっても寝つきにくい状態が続く。
起こりやすい問題:寝つきの悪化、眠りの浅さ
適度に疲労することで日中に睡眠欲求が積み重なり、自然に眠くなって深く眠れる状態に近づく。
ポイント:寝る時間から逆算した運動、日中の活動量の確保
ここでキーワードとなるのが、眠気の正体ともいわれる睡眠物質です。単独の物質ではありませんが、その代表としてよく挙げられるのが「アデノシン」です。アデノシンが一定量溜まってくることで、私たちは眠気を感じるようになります。
睡眠圧とアデノシン 「ししおどし」で理解する眠りの仕組み
深い睡眠には「睡眠圧」という考え方があり、現在では科学的にも証明されてきています。筑波大学の柳沢先生の解説によると、この仕組みは日本庭園にある「ししおどし」をイメージするとわかりやすいとのことです。
ししおどしに例える睡眠圧のメカニズム
ししおどしは、水が溜まると筒が傾き、水が出ると「カコーン」と音が鳴る仕組みです。これを睡眠に置き換えると、次のような流れになります。
- 起きて活動している間、日中の疲労によって眠気のもとであるアデノシンがポタポタと溜まっていく
- アデノシンが溜まって重くなると、ししおどしのようにカタンと傾く
- 傾いた瞬間、溜まっていたアデノシンが一気に放出される——これが睡眠にあたる
- そして朝起きると、また一からアデノシンが溜まっていく、という繰り返しになる

この繰り返しが睡眠圧と呼ばれるもので、圧がかかることで眠気と覚醒がコントロールされています。だからこそ運動不足はとにかく良くありません。適度に運動して疲労し、睡眠物質アデノシンがちゃんと溜まることで、自然に眠くなって深く眠れる——これが理想的な状態なのです。
今日からできる!質の良い睡眠のための3つの運動
ここからは、具体的にどんな運動をすればよいかをご紹介します。近年、科学的な根拠がわかってきた「スクワット」「リズム体操」「スローストレッチ」の3つです。何でもかんでも運動すればいい、ストレッチすればいいというわけではなく、それぞれに科学的な根拠に基づいた効果的なタイミングがあります。
1. スクワット(就寝の4〜5時間前)

スクワットのような大きな筋肉を動かす運動を行うと、深部体温は一旦上がります。それが4〜5時間経つと冷却されて下がっていきます。この下がるタイミングに寝る時間を合わせることで、深くぐっすり眠れるようになります。いつも寝る時間から逆算して行うのがポイントです。
2. リズム体操(夕方、20分ほど)

リズムに乗った体操やウォーキングを行うと、体の中にセロトニンという物質が放出されます。このセロトニンは夜になると変化し、眠りホルモンであるメラトニンになります。日中にセロトニンをしっかりと作ることが、夜の眠りにつながるのです。夕方、日が沈む頃に20分ほど行い、適度に汗をかくことで入眠のスイッチが入ります。
3. スローストレッチ(就寝前、反動をつけずに)
反動をつけずに行う、静かなストレッチです。この静かなストレッチが副交感神経を優位にし、心拍や血圧を落ち着かせて眠りへと誘います。それによって、より深い眠りにつながっていきます。
3つの運動に共通するポイント
どの運動も激しく追い込む必要はなく、適度な疲労と、正しいタイミングが重要です。特に夏場は熱中症のリスクもあるため、涼しい時間帯を選び、水分補給をしながら無理のない範囲で行いましょう。
3つの運動 早見表
ここまでの内容を、運動別のタイミングと効果として一覧にまとめました。
| 運動 | おすすめのタイミング | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| スクワット | 就寝の4〜5時間前 | 深部体温が一旦上がり、4〜5時間後に下がるタイミングで入眠しやすくなる |
| リズム体操 (ウォーキング含む) |
夕方、日が沈む頃に20分ほど | セロトニンが放出され、夜にはメラトニンへ変化して入眠を促す |
| スローストレッチ | 就寝前、反動をつけずに | 副交感神経が優位になり、心拍・血圧が落ち着いて深い眠りにつながる |
よくある質問(FAQ)
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16号整形外科院長 医学博士
㈱山田朱織枕研究所 代表取締役社長 マクラ・エバンジェリスト
治療の一環として枕を指導する「枕外来」を開設し、睡眠姿勢や枕の研究を行っております。
普段から診察室で患者様にお伝えしていることをできるだけそのままお伝えしております。
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