深部体温は下げると眠たくなる?睡眠との関係を解説

深部体温は下げると眠たくなる?睡眠との関係を解説

「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」といった睡眠の悩みを抱えていませんか?質の良い眠りには「深部体温」が深く関わっています。

深部体温とは、体の内部の温度のことで、私たちの体は夜になると自然に深部体温を下げて眠りにつく準備を始めます。しかし、現代人の生活習慣では、深部体温のリズムが乱れやすく、結果として睡眠の質が低下してしまうケースが多くなっています。

本記事では、深部体温と睡眠の関係について分かりやすく解説。深部体温をコントロールする具体的な方法や、日常生活で実践できるより良い睡眠のためのテクニックもご紹介しています。

深部体温の仕組みを理解することで、自然な眠気を促し、朝までぐっすりと眠れるようになります。睡眠の質を向上させて、毎日をより健康的で充実したものにしてください。

目次

深部体温とは?睡眠に影響する体温の基礎知識

深部体温とは?睡眠に影響する体温の基礎知識

深部体温とは、脳や心臓、肝臓などの体の内部にある重要な臓器の温度のことです。皮膚表面の温度とは異なり、生命維持に欠かせない内臓の働きを守るため、外環境の影響を受けにくく37℃前後で一定に保たれています。

深部体温は1日を通して変化するリズムを持っており、朝方が最も低く、夕方に向けて上昇し、夜になると再び下降します。この自然な体温変動が、私たちの睡眠と覚醒のサイクルを調整する重要な役割を果たしているのです。

睡眠との関係では、深部体温が下がる時に眠気が強くなり、上昇する時には覚醒しやすくなります。夜間の深部体温低下は質の良い睡眠を促し、朝の体温上昇は自然な目覚めを助ける仕組みとなっています。

深部体温の正常値と測定方法

健康な人の深部体温は37度前後といわれています。これは150年前であれば正しかったとされていますが、現代社会では人間の身体は変化しているといってよいでしょう。

参考:Harvard Health Publishing「When is body temperature too low?」

最近の研究では成人96人の2週間の体温の推移は35.2〜37.4℃の範囲だったという結果もあります。数十年にわたって平均体温が低下していると考える研究者が大半です。

日本人も平均体温が下がっていると言われています。「平熱は36.5℃」と聞くことはないでしょうか。これは、1957年に行われた測定結果により36.89℃±0.34℃が平均体温として採用されたものです。

しかし近年では青少年を中心に体温低下が報告されており、現代では1957年の平均体温よりも1.0℃程度低下しているという指摘もあります。

参考:女子大学生の基礎体温と日中体温、月経周期との関連性

深部体温は、正確な測定には直腸や食道にセンサーを挿入する方法がありますが、日常的な測定では腋下や舌下など深部に近い体表面で測定するのが一般的です。

正確な深部体温の測定方法(ワキで測る場合)
  1. 測定前に汗をしっかり拭きます。
    (入浴や運動、飲食の直後の測定は避けましょう。)
  2. 体温計の先端を腋窩の一番深いところに差し込みます。
    上腕二頭筋と大胸筋を密着させるようにして体温計を挟みます。
  3. 実測式の場合は10分以上、予測式の場合は測定完了の電子音が鳴るまでそのままにして測定します。

口(舌下)で測る場合は舌の下に挿入して口を閉じて測定しましょう。

近年では、装着するだけで深部体温を推定できるウェアラブルデバイスも開発されており、日常生活での体温管理を行いやすくなると期待されています。

表面(皮膚)温度との違いと睡眠への影響度

皮膚温度と深部体温には大きな温度差があります。健康な状態では深部体温は環境と接している皮膚温より高く、37℃前後に保たれています。

一方で皮膚温度は環境温度条件下や身体の区分によって大きく異なります。

各種環境温度条件下における全身皮膚温の算出結果

環境温度22℃25℃28℃31℃34℃
全身平均皮膚温29.531.032.834.334.5

参考:サーモグラフィによる全身および区分別平均皮膚温の推定より抜粋

皮膚温度は外環境の影響を受けやすく、体の中心から離れるほど低くなります。

睡眠時には深部体温と皮膚温度の逆転現象が起こります。入眠期において副交感神経が優位になると、手足の皮膚温度が上昇する一方で、深部体温は下降していきます。

手足が暖かくなって表面血管が拡張し、血流が増加して熱放散が活発になり、その結果として深部体温が下がって眠りに入るのです。

睡眠への影響では、深部体温の変化がより重要な役割を果たします。ノンレム睡眠が深まるほど深部体温は低下します。体温の低下が脳の働きを落ち着かせ、休息を促して睡眠の質をよくするのです。

深部体温を下げると眠くなる科学的根拠

深部体温が下がるのは、脳の休息のために不可欠なものと言えます。深い睡眠の時ほど体温は大きく低下し、脳がオーバーヒートしないように脳温を下げて休息させることで、脳の疲労回復が促進されます。

ノンレム睡眠では、深部体温の低下により記憶の整理や定着、疲労物質の排出などの重要な機能が活発化し、睡眠の質が向上することが明らかになっています。

体温が下がると眠りにつきやすくなる

人間は深部体温が下がると、眠気を感じ、その後深く眠れるようになるとされています。体温が下がるタイミングは、通常夕方から夜間にかけて始まります。

体温下降が始まってから約1~2時間後に強い眠気が現れます。深部体温は夕方に最高値を示した後、就寝時間に向けて急激に下降し始め、落差が大きいほどより強い眠気を誘発します。

入眠期において副交感神経が優位になると、末梢血管が拡張して手足の皮膚温度が上昇し、熱放散により深部体温が下降します。自律神経によって心拍数や血圧も低下し、体全体がリラックス状態に移行して自然な眠気が訪れる仕組みとなっています。

睡眠ホルモンと体温変化の関係性

睡眠と深部体温の関係にはホルモンが大きく関与しています。代表的なのが「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンです。

メラトニンは光を浴びてから14〜16時間ほど経過すると分泌が始まります。末梢血管を広げて体の熱を外に逃がして深部体温を下げます。

参考:不眠症-森ノ宮医療大学学術リポジトリ

深いノンレム睡眠(徐波睡眠、N3ステージ)時には成長ホルモンが活発に分泌されます。就寝後の30分から1時間で訪れるのですが、これは深部体温が最も低下するタイミングと一致しています。

参考:睡眠を学ぶための基礎講座

深い眠りの時に分泌される成長ホルモンが筋肉や骨の維持、細胞修復に大きな役割を果たすため、睡眠が大変重要になるのです。

一方、覚醒に向かう朝方には全く逆の反応が起こります。起床の約2時間前から「覚醒ホルモン」と呼ばれるコルチゾールの分泌が始まり、血糖値や血圧を上げて活動の準備を整えます。

参考:睡眠とホルモンの関係 第6回 睡眠の基礎知識~その5

コルチゾールは起床後30分~45分後に最も分泌量が高まるとされています。1日の活動リズムを整える大切なホルモンですが、過剰なストレスがかかるとコルチゾールの分泌が慢性的に増えることがあります。

深部体温が下がらない人の特徴と原因

深部体温があまり下がらない人には要因があるとされています。慢性的なストレスや自律神経の乱れ、不規則な生活による体内時計の乱れなどが典型的な原因です。

さらに、運動不足による筋肉量の減少は熱産生力を低下させ、体温調節を難しくします。精神的ストレスは脳の温度上昇を招き、自律神経に負荷をかけます。

また、甲状腺や副腎の不調、極端なダイエット、栄養不足、さらに冷暖房に頼りすぎた生活も体温調節力を弱める要因となります。深部体温が下がらないとぐっすり眠ることが難しくなります。

ここでは睡眠時に体温が下がらない人の特徴や原因をまとめました。

睡眠に悩む人によく見られる体温パターン

睡眠に悩む人には、健康な人とは異なる体温変化パターンが見られます。最も顕著なのは、夜間の深部体温が高く維持され、昼夜の体温差が小さいことです。

健康な人は夕方に体温がピークを迎え、その後徐々に低下して睡眠中は低い状態を保ちますが、睡眠にお困りの方ではこの低下が不十分です。寝つきが悪い方では、就寝時になっても深部体温が十分に下がらず、手足の血管拡張による熱放散がうまく働かないため眠りに入りにくくなります。

一方、夜中に目が覚めやすい場合は一度は体温が下がっても夜間を通して安定せず、睡眠後半に本来低いはずの体温が再び上昇する傾向があります。

体温リズムの乱れは、脳や自律神経に負担をかけ、眠りが浅く中断されやすい状態を生みます。結果として、夜間の十分な休養が得られず、日中の倦怠感や集中力低下にもつながります。

手足の冷えを感じる方でも深部体温が高い理由

冷えやすい方は「手足は冷たいのに眠れない」と感じるケースが多いのではないでしょうか。手足が冷えやすい方がなかなか眠れないのは、冷えだけでなく深部体温の高まりが同時に起こるからです。

手足の冷えを感じる方は末梢の血流が悪く、手足は冷たくなる一方で、深部体温は37℃前後に保たれています。寒さやストレスのせいで交感神経が過剰に働くと、血管が収縮して熱の放散が妨げられ、夜間も深部体温が下がりにくくなります。

この状態が続くと、冷え→自律神経の乱れ→さらなる冷えという悪循環が生まれ、睡眠に必要な体温低下が起こらず寝つきが悪くなります。対策としては、手足を温めるだけでなく、血管拡張を促して熱を適切に放出できる状態を整える必要があります。

ストレスと自律神経の乱れによる影響

慢性的なストレスは、自律神経とストレスホルモンの働きを通じて体温調節に影響します。

ストレスを受けると副腎からコルチゾールが分泌され、脳の扁桃体を刺激。交感神経が活性化して血管が収縮し、心拍数が上がります。

この状態が続くと、夜間に活発になるはずの副交感神経の働きが抑えられ、深部体温が高いまま維持されます。自律神経が乱れやすければ、末端の血流が悪くなる一方で体内部に熱がこもり、睡眠の質が低下します。

現代人は日常的にストレスにさらされており、ストレス→自律神経の乱れ→体温調節の低下→睡眠悪化→さらなるストレスという悪循環に陥りやすいです。根本的な対策としては、自律神経のバランスを整えることを意識しましょう。

深部体温を下げるために試したい4つの方法

深部体温を下げるために試したい4つの方法

睡眠の質を向上させるために深部体温を下げる方法は、即効性のある方法から長期的な変化が期待できる方法まで多岐にわたります。

  1. 入浴で深部体温をコントロールする
  2. 寝室の温度と湿度を管理
  3. 食事と飲み物で体温を調整
  4. 軽い運動

手足の甲の体に対する相対的温度が上昇し、深部体温(体の内部の温度)が低くなるほど、眠りやすくなります。

深部体温を下げる方法は個人の生活スタイルや体質に合わせて選択しましょう。時間に余裕のある方は入浴など時間がかかるものでもかまいませんし、忙しい方は寝室の温度調整から始めるといった工夫が可能です。

①入浴で深部体温をコントロールするタイミング

入浴すると、体温が1℃くらい上昇します。入浴後は、血管がひらいているために熱が放散されやすい体になり、結果として深部体温が下がっていきます。

湯温と入浴時間による体温変化には明確な違いがあります。40℃のお風呂に15分入浴した場合深部体温は約0.5℃上昇します。

38℃より低い温度で手短にシャワーで済ませた場合は、深部体温の上昇は低く抑えられます。体温管理には適切な温度と入浴時間に注意しましょう。

シャワーでは、身体の汚れを洗い流す「清浄作用」はあっても、そのほかの働きは期待できません。湯船につかれば深部体温を十分に上げられます。

最適な入浴タイミングは就寝1時間~2時間前で、38~41℃のお湯に10~15分浸かることです。この方法なら無理なく継続しやすくおすすめです。

②寝室温度と湿度の理想的な設定値

深部体温を効率よく下げるためには、寝室の温度と湿度を適切に整えましょう。寝具や寝間着を考慮して室温は概ね13〜29℃の範囲が目安とされています。

13℃は低温に感じられますが、結果的に寝ているときに身体の周辺温度が33℃前後であれば睡眠の質は保たれると考えてよいでしょう。また湿度は40〜60%程度が理想です。

参考:健康づくりのための睡眠指針2014   6-②自分の睡眠に適した環境づくり

エアコンや加湿器を併用する場合は、加湿器をエアコンの風が直接当たらない場所に置き、空気の循環を意識するとよいでしょう。また、年齢や個人差により快適と感じる温度は異なります。

若い人はやや室温を高め、高齢者は低めにしがちです。高齢者は冬場のヒートショックや夏場の熱中症を避けるためにも、エアコンを上手に使って調整してください

若い人は高齢の方よりも暑さや寒さの感覚が敏感ですが、身体の周辺の温度が上がり過ぎない、寝返りしにくくない寝具を用いて睡眠の質を保ちましょう。

③食事と飲み物で体温を調整するコツ

食事や飲み物は日々の生活で深部体温をコントロールしやすくなる方法として活用できます。

体を冷やす食材には、きゅうりやトマト、なす、レタスなどの夏野菜があります。暑い時期が旬のもので、カリウムと水分が多く含まれており、利尿作用によって尿と一緒に熱も出してくれるため、体温を下げる働きがあります。

一方、生姜やにんにく、唐辛子など体を温める食品は夕食時には控えめにしましょう。

就寝前の飲み物では、ノンカフェインのハーブティーがおすすめです。カモミールティーやラベンダーティーには香りによるリラックス作用があり、身体がリラックスすると緊張がほぐれて眠気を感じやすくなります。

反対に、コーヒーや緑茶などのカフェインには眠気を解消する働きがあるため、寝る前に飲むと目が冴えて眠れなくなるため避けましょう。

夕食のタイミングにも気を付けてください。食物を消化するには数時間かかるので、夕食は眠る3時間以上前に食べるのが理想です。

眠る直前の食事は消化器系が活発に働き続け、体内の温度が下がりにくく眠りが浅くなります。また消化に時間がかかる揚げ物、タコやイカなどは避けたほうがよいでしょう。

どうしても遅い時間に夕食を摂る場合には、夕方に軽食としておにぎりやバナナなどを食べておきます。夕食はできるだけ軽い物で済ませると睡眠への影響を抑えられるでしょう。

④軽い運動で体温リズムを整える方法

軽い運動は深部体温の自然なリズムを整え、睡眠の質を向上させるのに役立ちます。午後3時から5時の夕方の時間帯に行う運動は、体温が上がりパフォーマンスが高まりやすくなっています。

また運動で体温を一時的に上昇させた後、深部体温が下がるため、就寝前の自然な眠気を促します。

運動は激しいものでなく、ストレッチやヨガなどで、血行を促進して体と心をリラックスさせれば熟睡しやすくなります。ただし、寝る直前に行うと逆に覚醒してしまうため注意が必要です。

ただし、激しい運動は交感神経を刺激し睡眠の質を下げるため避けてください。大切なのは継続することですので、無理なく続けられる時間帯や運動を選びましょう。

今日からできる深部体温を下げる生活習慣

深部体温管理を生活に取り入れて、睡眠の質をアップしていきましょう。一つずつは難しくないのですが、習慣化するには少し時間がかかる場合もあります。

仕事や家事などライフスタイルに応じて、今すぐ取りかかりやすい方法からスタートしてください。完璧にやろうとせず、意識しておくだけでも睡眠習慣によい影響となるでしょう。

就寝3時間前から始める体温管理術

就寝時間から逆算して体温管理を行います。具体的な行動を決めておくと、計画的に深部体温を下げられるでしょう。

体温管理の例
  • 21時:運動・夕食完了
  • 22時:40℃入浴15分間
  • 22時30分:軽いストレッチ
  • 23時:照明調整・電子機器オフ
  • 23時30分:読書や瞑想
  • 0時:就寝

0時就寝を想定した場合、21時から段階的に体温管理を開始します。就寝3時間前(21時)にはランニング・ジョギング・筋トレなど、息が上がるような運動は、眠る3時間前までに終わらせておきましょう。

また、同じくらいの時間までに夕食も終わらせるようにします。睡眠1時間前(23時)には照明を暗くし、スマートフォンの使用を控えます。

慣れるまでは各段階で手足の温かさ、眠気の程度、心拍数の落ち着きなどを確認するとベストタイミングがつかみやすくなるでしょう。

体温が自然に下がる睡眠環境の作り方

良質な睡眠には、深部体温が自然に下がりやすい環境を作りましょう。寝床内の温度に気を付け、掛け布団は羊毛や羽毛、綿や麻など吸湿・放湿に優れた天然素材を選んでください。

汗の発散がスムーズになり体温調節がしやすくなります。化学繊維は蒸れやすく睡眠の妨げになるため注意が必要です。

また照明環境も深部体温に影響します。就寝前には30ルクス以下にしましょう。目安はろうそくの明かり程度です。

寝るときにはほぼ暗闇の0.3ルクス程度が推奨されますが、真っ暗闇だと逆に眠りにくい方もいるかもしれません。そんな場合には光源が目に入らなければほんのりとした明かりは使用してもよいでしょう。

青白い光よりもオレンジ色の電球や暖色系の間接照明が最適です。夜に光の刺激を抑えるとメラトニン分泌が促され、自然な体温低下と入眠が促進されます。

深部体温の測定と記録で睡眠の質向上を目指す

睡眠の質を上げるためには、体温データを活用するのもよいでしょう。スマートウォッチやアプリを活用すると、手首皮膚温の変化を記録でき、基準値との比較で睡眠の質を把握できます。

体感だけではあまり睡眠の質の変化に気付けない場合もありますので、アプリなどで記録していきましょう。

ただしスマートウォッチは体表温度を測定するものです。深部体温は測れませんので、あくまでも一定の時間によって体温が大きく上昇したり逆に下がったりしていないかの目安として使います。

生活習慣を改善したときに、入浴や軽い運動でどのように体温に変化が出ているかの参考として用いるとよいでしょう。

深部体温が下がりにくい人の対処法

対策しても深部体温が下がらず睡眠の状況に変化が見られない場合、体質的要因や病的原因が隠れている可能性があります。通常は、高温多湿な環境、自律神経の乱れや冷えなどが深部体温が下がりにくくなる理由です。

睡眠の質が良くないと感じている方、計測して数週間以上体温が下がらない状態が続く場合や、動悸・異常発汗・体重減少などの症状があれば、心療内科や内分泌科での専門的な検査と医師への相談が重要になります。

年齢による体温調節機能の変化

年齢を重ねると、ホルモンバランスの変化と身体機能の低下により体温調節能力が大きく変わります。女性の中高年期では女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により自律神経の働きが乱れ、ホットフラッシュや冷えのぼせなどの体温変動が起こります。

プロゲステロンの影響で夜間の深部体温が下がりにくくなり、睡眠・覚醒のメリハリがつかず眠りにくくなったり日中の眠気を感じたりすることが多くなります。

高齢者は汗腺の機能低下、筋肉量の減少、体内水分量の減少により体温調節機能が著しく低下します。60代以上では平均体温が下がり、暑さや寒さを感じにくくなるため熱中症や低体温症のリスクが高まります。

発汗能力の低下と皮膚血流の減少により、暑い時に体温を下げることが困難になり、寒い時は筋肉量減少により熱産生能力も低下します。

年代別の注意点
  • 40代女性:ホルモンの変動による体温変動への対応
  • 50代女性:ホルモンバランス変化のピーク時期の体温管理
  • 60代以上男女:環境温度に頼った体温調節と水分摂取の徹底

薬を服用中の方や持病がある方の注意点

薬物治療や慢性疾患がある場合、深部体温調節に影響を与える可能性があります。降圧剤や抗うつ薬などは体温調節機能に変化をもたらすことがあるため、適切な理解と対策が必要です。

抗うつ薬は睡眠の質に直接関わる薬物です。抗うつ薬は覚醒作用がありセロトニンやノルアドレナリンを増やして脳を活性化させます。そのため脈拍数や血圧の変動を引き起こし、体温調節にも大きく影響することがあります。

また睡眠を促進する作用が期待できる抗うつ薬もありますが、鎮静作用が強いため日中の眠気を引き起こすことも。眠気に関しては慣れる方もいますので、薬剤の使用に関しては主治医とよく相談しましょう。

甲状腺に関する持病がある方は基礎代謝が低下し、体温維持が困難になることがあります。体温が下がりやすくなるため、寒さを感じやすくなる方もいます。

逆に甲状腺の働きが活発な方では、過剰なエネルギー消費により体温が上昇しやすくなります。心拍も上がって神経が過敏になり、寝つきが悪くなることも。体温の調整のためにも、受診を継続してホルモンバランスを整えましょう。

糖尿病に関連する神経障害(糖尿病神経障害)は自律神経を障害してしまい、汗腺機能が低下して発汗がうまくできなくなります。そのため体温調整が乱れて、睡眠にも影響を及ぼす可能性があります。

慢性的な疾患がある方は急激な体温変化が起こらないように注意し、段階的な体温管理を心がけてください。睡眠薬や抗不安薬を服用している場合は、薬の作用が体温調節に影響する可能性があるため、自己判断での中断は避けましょう。

深部体温の調整について専門医に相談する場合

深部体温を調整する際はどのようなものが行われているのでしょうか。自分で対策を行っても不眠が続く場合には、睡眠科や心療内科などに相談しましょう。

体質や状況に合わせた治療やアドバイスが必要になるため、専門医への受診をおすすめします。

専門的な睡眠指導について

医師の処方によってメラトニン作動薬を使用して治療を行うことがあります。松果体から分泌されるメラトニンによる体内時計機構に作用して睡眠と覚醒のリズムを整える薬です。

メラトニン作動薬は、服用後1~2時間で深部体温を低下させて自然な眠気を促します。医師が判断する選択肢の一つですが、入眠に関する作用は他の睡眠薬ほど強くありません。

交代勤務後の睡眠や、時差調整時などにも使われます。

睡眠心理療法による治療

睡眠認知行動療法によって睡眠を促す療法を行うこともあります。入眠時のネガティブな思考や日中の思考を認知させる心理カウンセリングです。

主な治療法には下記の方法があります。

  1. 刺激制御法
  2. 睡眠制限法
  3. 漸進的筋弛緩法

一つずつ見ていきましょう。

刺激制御法

眠くなったときだけ床に就く方法です。寝室は睡眠時のみに使用し、読書やテレビを見るときは別の部屋を使います。

夜中に目覚めたら寝室から出て別の部屋で過ごし、眠くなったら寝室に戻るようにします。寝室に物を置かないようにも注意します。

睡眠制御法

平均睡眠時間を算出し、プラス15分だけ寝床にいるようにします。平均時間が5時間よりも短ければ、5時間は寝床にいます。

いつもの起床時間から逆算して寝床に入る時間を決め、寝床にいる時間の90%以上眠れる日が5日続いたら床につく時間を15分早めます。

継続して必要な睡眠時間になるまで伸ばしていくように、繰り返す方法です。

漸進的筋弛緩法

筋肉を緊張させてから弛緩させて心身のリラックスを促します。まず仰向けになり深呼吸を3回します。

次に足先から順に各部位を5秒間力を入れて緊張させます。その後力を一気に抜くと筋肉が緩んでいく心地よい感覚を味わえます。

力を入れる部位は、足先、ふくらはぎ、太もも、お尻、お腹、胸、腕、肩、首、頭と順に上がっていく感じです。全て緊張させなくてもよいですし、途中で眠ってしまっても問題ありません。

いずれの方法も継続して睡眠の質を上げる方法ですので、進めやすい方法を医師と相談してください。

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